物語置き場

□黄金に消えた夢
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「もう聞いてよシルバー!ゴールドがね!」



     黄金に消えた夢



今日もクリスは顔を真っ赤にしてオレの所に駆け込んでくる。

ここ最近それが増えた気がするのは緊張感があった旅が終わったからだろうか。

決まっている、本日も痴話喧嘩の中身を聞かされるんだろう。

そう言えばきっとまた彼女は顔を真っ赤にして否定する。

否定しているのにそうなら嬉しいと言うだろう、彼女。

(間違っていればいいと思っているだろう、『オレ』)

「…で、その時なんて言ったと思う!?」

それでね、と怒っているようで、その実楽しそうなクリスの口調。

聞くだけで友人の顔を思い出す。

不思議と微笑ましい気持ちになる。

(その裏の感情からは目を背けたほうがいい)

「シルバーもちょっとは言ってやってよ!」

クリスがふくれっつらでオレを見る。

彼女は自分が説得しても聞かないことを知っているらしい。

オレが言っても反発されるだけだとはまだ気付いていないようだが。

教えてやるつもりはない。

教えることを恐れている?

(オレと2人の接点が消えてしまうのではないかと)

「…まあオレとしては」

光を反射して輝く明るい水色の瞳。

持ち主の心に似た透明な水晶の輝き。

(その美しさを求めてしまったのは何時からだろう)

「このポジションもなかなか得がたいものではあるな」

聞いたクリスは一瞬呆けた顔をした。

それはオレが珍しく微笑を浮かべたかもしれないことに驚いているのか。

それとも言葉の真意を測りかねているのだろうか。

「シッルバーーーーー!」

振り返れば噂の友人が姿を現す。

やけに鋭かったりするコイツが何を叫ぶかと思ったら、

「テメー、クリスに色目使ってんじゃねーぞ!」

「え!?あれ、色目だったの!?」

「…使ってない」

意図したわけではないがそうも見えたかもしれない。

オレは彼女に気付いてほしくないのか、気付いてほしいのか。

(拒絶されることが怖いのだろうか、今更な話だ)


大切なものを守れたなんて自信、これっぽっちも持ってはいけないのに。
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