物語置き場

□また青空を
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美術部の活動はいつもフリーダムに。

時にはダンボールに、時にはトイレで、あちこちで自分の才能を試している。

…のかもしれない。

「あ、先輩。部長なら旅に出てますよ〜」

1人留守番でもしているのか、後輩の少年がさらっと必要なことを述べた。

「またあーさんいないの?…見つけ出して水責めにしてやらないと」


文字通り旅に出たであろう友人を探して、学校探索にスタート。



     また青空を



役に立たない顧問教師は気にしない。

幼馴染に会ったものの、探し人の行方には首を振る。

一旦部室に戻ると部員が1人増えていた。

遊び呆けていると見せかけて…やっぱり遊んでいる。

校舎中を歩き回った挙句、やっと掃除用具入れで見つけた。

確信を持ち、ノックもなく扉を開け放つ。


「こんにちは。いい天気ね」

「あ、ぶちさん…あれ?そのバケツは一体…?ま、まさか…?」

「私の心の中には暴風警報が発令中よ」

「ごごごごめんごめんて!!」

「避難しなくても構いません。そのまま呑まれてしまいなさい」

「あああああ待って待ってえ!」

「第一こんな窓もないところで何を描いてるのよ」


バケツを下ろし、親友に笑顔で詰問。

実際心から憤慨しているわけではなくても、とりあえず詰め寄る。

手間賃だけでもいただいておかなければならない。


「いやあ、何も見えんとこやったら自由な想像力が生まれるんとちゃうかなあと」

「大層な考えだけど…これはどうかと思うわ」

外には散乱した掃除用具。

本来納まるべき扉には1枚の張り紙がある。

『入っています。開けないでください』

「…これじゃ誰かが監禁されてるみたいじゃない」

「やーやーぶちさん、誘拐犯がご丁寧に入っていますなんて書くわけないやんかー」

「揚げ足取らない」

「いやあああバケツ向けんといて!」


美術部の活動はいつもフリーダムに。

時にはダンボールに、時にはトイレで、あちこちで自分の才能を試している。

…のかもしれない。

それで美しい絵が描ければ別に文句はないので、結局そのままだけれど。
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