物語置き場

□オーガストリターンズ
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入場門のさらに中、既にゲートを越えて幾松がひょっこり顔を出す。

心なしか表情がウキウキしている気がする。

「遊園地ってあんまり来ないけど楽しそうじゃない?思わず店休んできちゃったよ」

新八は再び頭を抱えたくなった。


…誰だか知りませんが、このメンバーで、遊園地で何をしろと…!?


「とにかくさっさと行こうぜ。遊びの鉄則、遊園地には朝一だ」

「なかなかいい言葉だな。おーい地味忍者、置いてくぞ」

「誰が地味だァ!気にしてんだよ!ってあれ?いつの間に!」

新八がしばしのショックを受けている間に全蔵と高杉は遊園地に入っていた。

やはり遠慮なく、幾松も引き連れて3人でパンフレットを覗き込んでいる。

横から見ると非常に変な集団だ。


いや誰か止めましょうよどう考えても指名手配犯の顔じゃないですか

手配書ないんですか左目に包帯の人なんてそうそういませんよね

もう1人も一応お尋ね者みたいなもんですよ人斬ったりとかしてますよ

金のためなら攘夷活動にでも手を出しますよついでに痔ですよ

あの女の人は一般人ですけどでも指名手配犯を店で匿ってたりするんですよ

バイトとして雇ってますよそれって攘夷の資金源的にどうなんですか


様々な言葉が一瞬にして新八の脳内を駆け巡ったが無視した。

(…こうなったら僕だって楽しんでやる!畜生ー!)

つまりヤケクソになってしまったのだ。

普段貧乏な分、こういうところで楽しまなければという思考が働いたせいでもある。


新八はすっかり失念していた。

大江戸遊園地にはよくお通が遊びに来ることを。

そして幾松も全蔵ももちろん、新八も知らないことがあった。

お通のプロデューサーであるつんぽには、攘夷浪士との繋がりがあるらしいことを。

最後に高杉は完全に忘れていた。

遊園地には行くなと万斉にきつく念を押されていたことを…


「あ、やべェ、真選組だなアレ」

高杉の一言に振り返った3人が一斉に目を見開く。

「よくもまあノコノコと」とでも言いそうな怒気で迫ってくるのは土方だ。

「そこ全員!動くんじゃねーぞコラァ!」

遊園地の中なのにすでに抜刀済みである。

「「いやァァァァァァァ!」」

幾松と新八は同時に金切り声で叫んだ。

全蔵の姿は既になかった。


これを最初に、新八のところには定期的に差出人不明の葉書が届くことになる。
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