「セフィロスを追う」

ザックスの言葉に仲間達は頷いた。
其々が胸に秘めた思いを隠しながら。歩きだす。


炎の明かりを頼りに、フリオニールは小さな手帳に日々の出来事を綴っていた。
それは一言二言の日もあれば、長く記されている日もある。




湿地帯で馬鹿でかい蛇と戦った。ジュノンと言う港町で水兵の格好をした。海の上進む船の中、不気味なジェノバと戦い、勝った。ゴールドソーサーと言うキラキラした場所に行って、ケットシーと言う不思議な猫に出会い。砂漠に落とされて。閉ざされた牢獄で、バレットの過去を知った。彼は過去に立ち向かい、勝利し、共に歩くことを止めなかった。ゴンガガと言う村に立ち寄り、ザックスが生まれた家を訪れた。彼はまだ帰れないと言って、俺に手紙を託して村の外で待っていた。ザックスのお母さんが泣いていた。コスモキャニオンと言う場所で、星について少しだけ学んだ。ジタンが寂しそうな顔をしていた。俺も、同じ顔をしていたんだと思う。二人で顔を見合わせて苦笑いを浮かべた。石になっていたレッドのお父さんをみた。レッドはお父さんの事を誤解していたらしい。レッドは名前をナナキに戻して、一緒に旅を続けることになった。そうしてセフィロスを追う旅は進み。とある森を抜けている途中、ユフィという元気な少女に出会い、彼女もまた仲間に加わった。

「…これから俺達は、あの場所に向かう」
「何書いてんだ?!」
「うわぁッ!!」

突如自分の頭上から覗きこまれ、フリオニールは手に持っていた手帳を地面に落してしまう。見上げればザックスがそこにいた。
近くの湖で水浴びでもしていたのだろう。ザックスは濡れた髪をタオルでガシガシと乾かしながら、フリオニールが番をしている薪に手をかざし「寒くない?」と言いながらドカリと腰を降ろす。


今日はフリオニールが見張りをする番だ。今テントの中ではエアリスとティファが眠っている。ケットシーにバレット、それにナナキとユフィ。四人とは今、別行動を取っていた。
それは次に向かう村が関係しているのだが、フリオニールは五年振りに訪れることになるその村の事を思い出し、唇を噛みしめた。

「ジタンももう直ぐ上がってくるぜ?」
「そうか」

パチパチっと炎が爆ぜる。

草原を吹き抜ける風。さらさらと髪に触れ、青い空に吸い込まれていく。
空を見上げた。真っ青な空だ。白い雲が浮かんでいる。
泣きそうな顔を隠しながら、彼もまた前へと進む。

立ち止まるわけにはいかない。


*********

辿り着いたのはニブルヘイム。悪夢の始まり。かつて炎に包まれ、村人は全てセフィロスの手によって屠られた村。
神羅が再建し、今では普通の村と変わりない偽りの場所。

「しっかし、本当この村は変わらねぇな〜」

ザックスは村の入り口に立ち険しい表情を浮かべた。

「何だか変な感じね。」

その隣に立つティファ。故郷の村である筈なのに、ここは既に彼女の住んでいた村ではない。それでも、形は全て同じ。懐かしい想いと、辛い思い出が交差する。

「おっと。レディに暗い顔は似合わないぜ?」

すかさずジタンがその手を取り、二コリっと笑いかけてやる。
その笑顔にティファも表情を和らげ一歩村に踏み込む。

「クラウドの故郷でもあったんだよな?」

ティファの隣に並びフリオニールが村をきょろきょろ見回し、首を傾げた。
彼もまた5年前の出来事を知っているだけに、再建された偽りの村に疑問を浮かべているのだろう。彼が見た時、村は既に燃えていたのだから。
そんな彼の様子にザックスが苦笑しつつ村に一軒だけある宿屋を指さす。

「五年前。俺と、クラウドはこの宿に泊っていたんだ。」

五年前。クラウドと共に過ごした思い出を呼び起こすと、ザックスは眉に皺を寄せる。あの時はあんなことになるだなんて、誰も思っていなかった。
炎に包まれる村。焼き払われ、逃げることも出来ず地に伏す人々。
未だに手掛かりすらつかめない親友は、一体どこに‥?

「大丈夫ザックス。きっと、その子は大丈夫だよ。」
「エアリス」

ザックス背をトンっと押し、エアリスは微笑む。

「セフィロスを倒しちゃったくらいだもん。無事に決まってる。」
「そう、だよな。俺が信じないとな!!」

エアリスの言葉にようやく何時もの勢いを取り戻したザックス。
周囲の仲間達もそんな彼を見てホッと胸をなで下ろす。

「それじゃあ、一応今日はニブルヘイムで休もう。」

ザックスの言葉に全員が頷き、入口付近にある唯一の宿へと向かう。
すると、不意にナナキが村の中心部へと顔を向けた。

「どうした?」

気付いたジタンもそちらへと視線を向ける。すると、懐かしい気配をそちらから感じ、ジタンは駆けだす。

「ジタン!」
「アイツがいる!!」

ジタンの言葉にザックスはハッとし、エアリスとティファ。それにフリオニールに宿で待つように指示すると駆けだした。
ジタンが言うアイツとは、恐らく。神羅ビルを脱出した際出会った、見慣れないタークス。どこからともなく様々な武器を取り出し、執拗な迄にザックスを狙ってきた青年。
ジタンとフリオニールの仲間だったと言う、名を確か‥

「バッツ!!」

ジタンの声にザックスも武器を構える。ナナキも姿勢を低くとり、今にも襲いかからん勢いでバッツを睨みつけていた。

「ようジタン、久しぶり」

件の人物。バッツはと言うと、給水塔の上でのんびりと弁当を食べ、人懐っこい笑みを浮かべながらヒラヒラと手を振っている。

「タークスがこんな所で何の用だ?!」

ザックスが叫ぶと同時にバッツは弁当の蓋を閉め、立ちあがる。そして弁当箱を風呂敷に包むと、給水塔から飛び降り地面に着地した。

「う〜ん…足止め?」

首を傾げながらその手にガンブレードを出現させる。ジタンはそんな彼を信じられない、と言った様子で見つめる。

「バッツ、どうしたんだよ?!お前ならわかるだろう!自分が何やってるかくらい!!」
「悪いジタン。今俺は、一応神羅側の人間なんだ。」
「バッツの言うとおりだ」

給水塔の裏側から、その人物は現れた。

「俺達はお前達の足止めをするために此処にいる。」

背から大剣を抜き構える。

「…久しぶり。」

バッツの隣に立ち、ふわりっと笑みを浮かべたのはずっと探していた人物。

「クラウド」


冷たい風が吹き抜けた。


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