夢を見ていた

異世界、と表現するのだ一番妥当だろう

そこで自分は沢山の大切な人と出逢った


背中を押された
同じ道を歩いた

手をつないで
隣を歩くことを思い出した

笑って、怒って、嬉しくて

声を出して泣いた


瞳を開けたら全部消えてしまう気がして、怖くて瞳を開きたくなかった。

『…クラウド』

でも、呼ばれたから


「だから、起きられたんだ」

言葉にしたら恥ずかしいのに、瞳からボロボロ涙を溢しながらバッツに背に回した手の力を込める。
離れたくない。一ミリたりとも、離したくない。

5年。言葉にすると不自然で、彼の体温を求めることで埋めていく、そうして漸くその深さに気付く。

視線が混じって、彼の瞳に瞳が重なって。

「…クラウド、その目」
「ああ‥」

コツンっと額を重ねる。悪戯っぽく笑みを浮かべると困った様な表情。

「この目は…俺の戒めであり、約束であり、罰‥だから。」

言葉の重み。もう二度と失わないと決めたこと。

バッツの話を聞いてわかったことがある。クラウドにとってそれは、かつて願っても叶うことなく散った願いだ。

その為に‥


* **** ***

身体につけられていたコードが一本ずつ外されていく。
先日行った最終チェックでもクラウドの身体に異常はなかった。医師曰くは「五年も眠っていたとは思えない」らしい。
科学班にも連れて行かれ本格的に魔洸を浴びせられた。バッツが猛反対していたが、自分でも驚く程に大丈夫だろうと思った。そして確かに、大丈夫だった。
かつての記憶を持っているクラウド。そしてその身に埋め込まれたジェノバ細胞は、かつての彼の力を呼び醒ました。


「瞳の色が変わってしまったのは残念だったな。」
「な〜昔のクラウド、こんな色の瞳してたんだよな〜」

研究所の端の椅子に座り5年前の資料を見ているのはバッツと、神羅副社長のルーファウス。二人は暇がない筈なのに、暇を見つけてここにきていると言う。

クラウドが目を覚まし何よりも驚いたのは、ルーファウスの豹変ッぷりだった。

「ルーとはどっかのパーティーで一緒になってさ!今ではマブダチ的存在なわけ。」
「まあ、バッツはこれだろう?いつの間にか流されていたわけだ。」

自分の見舞いに来てくれたルーファウス。肩を並べて楽しそうに話をする二人は、どこからみても仲の良い友達。どんな経緯があったかはまた別の話で述べるとして。

「ルーが、クラウドのことも大分匿ってくれたんだぜ?」
「お前に泣きつかれた日には、どうしたものかと思った。」
「泣いてねぇし!」
「どうかな?」

楽しそうに会話を弾ませる二人。
二人の会話はルーファウスのケータイが鳴るまで続き、かつてのルーファウスを知るクラウドからしてみれば戸惑うような嬉しいような、不思議な感覚だった。

「君を助ける為とは言え、ジェノバ細胞を移植した。」

そうしてルーファウスの言葉。恐らくソルジャーになった者の末路を、彼は知っているのだろう。

「魔晄は出来るだけ薄めたのだが、やはり瞳の色は変化してしまったな。」
「それは仕方の無いことだから。」

クラウドは鏡に映る自身の姿を見て笑みをこぼす。

「これでまた戦える」

ルーファウスはクラウドの言葉にホッと胸を撫で下ろし、いい加減しつこいケータイを切る為、通話ボタンを押す。

そうしてその電話こそが、プレジデント神羅の死。そしてセフィロスの復活を告げるものだった。


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