『―戻るんだ…』

異世界での戦いを終えたクラウドは不思議な浮遊感に身を委ねていた

異世界での戦いが終わる

それは彼との別れを意味していた


『せっかく、出逢えたのに』

誰かが耳元で囁く

『また失うんだね』

胸を刺す痛み

一緒に居たいと願った
一緒に居たいと誓った

それなのに…


願いは届かない

また、忘れてしまうのだろう


望みは叶わない
ただ、忘れて行くだけ


『諦めないで』

誰かが、手を引く

『そっちじゃないよ』

強くひかれ、そうして落ちて行く

『大丈夫、一緒だから…』

温かい 優しい 光

『クラウド』

一瞬、誰かと目があった
薄らと開いた瞳に映ったのは

海の蒼

『もう、大丈夫ッスよ』

彼が笑う
太陽の様に

戦いの中、その笑顔に何度助けられただろう


『強く、強く願うんだ。そしたら…』


きっと一緒!


クラウドの手の中にあったクリスタルの欠片が輝く

それは周囲の光を引き寄せ落ちて行く
まるで流れ星の様に 三つに分かれ 落ちていく


不意に闇の気配が迫った


『やめろ!!』

叫び声が聞こえたが、その闇は落ちて行くクラウドへ追いつき、光を弾いてしまう


本来戻るべき未来
落ちて行く過去


『俺は…大丈夫だから‥』

どうかあの人達を助けて‥


クラウドの願いに呼応するかのように、光は落ちていった





* *** **



クラウドはあの時のことを思い出し、隣に立つバッツへと視線を向ける。
バッツはフリオニールの登場に焦っているように見えた。ジタンならばともかく、フリオニールに冗談は効かない。しかも、彼が本気で怒っているならば尚更だ。

タークスの制服を着たバッツ。目が覚めた時。一番初めに映った彼の姿に、クラウドは酷く辟易した。自分の見せる幻だろうと思ったのだ。
だが、彼は本当に彼だった。夢幻などではなく、バッツ・クラウザーその人だった。

その瞬間。クラウドは悟った。あの夢、夢の様に思えた出来事は。ティーダの声は本物だったのだと。あの光はバッツだったのだと。
何故?と聞かれれば疑問は尽きないが、彼が居てくれる。その事実だけで、クラウドは良かった。
そうしてクラウドは己が過去に飛ばされたことを知る。あの戦いのことは覚えている。仲間達とセフィロスと対峙し、星を救ったことを。
夢にしては出来過ぎており、時系列はほぼ一致している。異なることを上げれば、バッツが居て、自分が魔洸中毒にならず、そう。自分がこの場に居ると言うことは。

「ザックス‥」

親友の生存を知り。クラウドはバッツの胸を借りて泣いた。


一体。何処までが一緒なのかわからない。それでも、クラウドは戦うことを決意する。
既に自分の身体には依然と同じ施術が施されていた。S細胞の移植。ソルジャーとしての目覚め。魔洸中毒にはならなかったものの、あの時と同じ。『リュニオン』の声は、クラウドを飲み込もうとしている。既に壱番魔洸炉は破壊され、七番街は失われていた。

これからでも出来ることはある


「…バッツ。」
「うん?」
「一旦退こう」
「了解!」

フリオニールが再度ストレートアローを放つ。それをスレスレで避けると、バッツとクラウドは駆けだす。

「バッツ!クラウド!!」

フリオニールの声が聞こえたが振り返らなかった。ただ、彼の背後に控えた二人の女性の姿に、クラウドは無事だったと言う安堵感からホッと胸を撫でおろした。





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** ** ***


一部完了




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