長きにわたる神々の闘争は終焉を迎えた。
自分の元いた場所に帰るのだと、青年も漠然とした思いを抱き、瞳を閉じる。

次第に仲間達が姿を消していく。そして、青年もまた…




暗いような、光の中のような
まるで海の中を漂っている。そんな、感覚に包まれながらどこかに運ばれていく

誰かが青年の名を呼ぶ


銀…青‥…黄‥赤

様々な色が取り巻き、一気に消えていく

『     』


だれ


必死に情報を集め、その声の主を見極めようとする

だが、青年が記憶する誰もがそれに当てはまらない


女神の声が聞こえた気がした

彼等に力を託し、消えて行った女神


『あの子を‥救って…』


3つの光が落下していく

それを見届けると、彼もまた光となってその場所に落ちて行った


** ** ****** *


一瞬にして意識が浮上する

それはまるでデジョントラップから抜け出す時の様に


「…こ、ここは?」

瞳を開けて一番に映ったのは炎。
そうして燃える家や、崩れていく建物。遠くからはいくつもの悲鳴が響き、咄嗟に青年は駆けだしていた。

かつて自分が故郷を失った時と似ている。唯一違うのは、その場に兵士がいないこと。そして、その場所を青年が全く知らないことだろう。

「誰か、無事な者はいないか?!」

叫ばずには居られなかった。例えこの場所が見知らぬ場所で有ろうと、助けられる人がいるのであれば助けたい。倒れている人々は皆息が無く、青年の声に応える者もいない。

じゃりッ

不意に聞こえた足音。青年が振り返ると、壮年の男性が青年を見て瞳を見開いていた。
青年は直ぐに男性へと近寄ると、生存者がいたことにホッと胸をなでおろす。

「お前、その格好…旅の者か?」
「ああ。そんな所だ。」

男性の背には黒髪の少女。焔に照らされ垣間見えるその顔には血色が無く、重症であることは一目でわかった。青年は腰から下げていた革袋からポーションを取り出し少女に振りかける。癒しの効果を持ったそれは少女の傷を癒す。

「恐らく俺達以外にもう、生存者はいない。あんたも、早くこの村から出るんだ。」
「そんな。」
「行く場所が無いなら俺と一緒に来い。神羅の兵士がやってくるまえにな!」
「‥しんら?」

どこかで聞いたことが有る名前。青年が首を傾げていると、空から大きな音が響いた。

「来ちまったか。行くぞ!」
「…あ、ああ!!」

駆けだす男性の後を追い、青年も駆けだす。
空から現れたそれはゆっくりと村に降り立ち、そこからは人が出てきた。
青年は何度か振り返りながらも、男性の後を追って走る。



「そう言えばお前の名前は?俺は、ザンガンと言うんだ。」
「ザンガン?」

数時間走り続け、ようやく立ち止まった男性は少女を傍らに置きながら青年に手を差し出した。
青年はその手を取りながら答えた。

「俺は…フリオニール。フリオニールだ。」




**********


少女は何時もの教会へと急いでいた。
母親からは何度も危ないと言われたが、胸がざわつく。

星の声が少女に語りかける。急ぎあの場所へ迎え、と。
先日あの人がミッションに向かった。それからという物の、彼女はずっと嫌な予感がしていた。

そうして辿り着いた何時もの教会。
白い花が教会の床の一部から顔をのぞかせている。
以前あの人が落ちてきた際に開けた穴。そこから差し込む夜空の光。

そこから空を見つめていると、一斉に星が流れた。

「…流れ星」

流れ星は人の命に例えられることがある。
沢山の人が命を落としたのだろうか?そんな考えを抱きながら、少女は手を組み祈る。

どか、あの人が無事でありますように…と。

不意に流れ星の一つが物凄い勢いで落ちてきた。

「えッ…嘘?!」

そうして少女が見守る中、流れ星は破れた天井を抜け。少女の目の前で眩い光を放ちながらゆっくりと、その形を収縮していく。眩しさに何とか瞳を開けていた少女は、その光の中から現れた姿を見て首を傾げた。

「…妖精?」
「妖精…では、無いかな?」

そこには金色の髪に、同じ色の尾をもつ少年の姿。

「初めましてレディ。俺はジタン。ジタン・トライバル。」

片手を差し出し、恭しく礼をする少年…ジタンの姿に、少女は何度か瞬きをしたのち、クスクスと笑みを溢した。

「君、面白いね。」
「麗しいレディにそう言っていただけるのであれば、本望です。」

微笑む少女を見上げたジタンはパチリっと片目を閉じてウィンクをして見せる。

「私はエアリス。エアリス・ゲインズブール。よろしくね、妖精さん。」

そうして重なった手。重なった視線。
二人の足もとで白い花が風に揺れた。

その日からエアリスの家、一人の少年が家族として増えることになる。



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