フリオニールは傍らでストレッチを行うザックスを横目に見ながら、クスリっと笑みを零した。

「よくこんな所で運動出来るな?」
「こんな所だからだよ。勝手知ったる、昔の庭。って、奴だ。」
「意味がわからないな。」

呆れたように言いつつも、フリオニールは心が落ち着いていくのを感じる。
ザックスとゆっくり話したのは実はこの時が初めて。特にアバランチの活動に参加していなかったフリオニールは、ザックスとの会話も少なく、彼がどんな人物かも知らずにいた。

「あーどうやって出ようかなー!」

現在フリオニール達は神羅ビルにいた。正確には捕われていた。
七番街崩壊後、彼等はアバランチのリーダーであるバレットとも再会。
浚われたエアリスを助けに神羅ビルに潜入する。
恐怖の長距離階段を制覇し、新たな仲間レッドサーティンと共に、宝条と言う科学者からエアリスを救出したまでは良かった。だが、その後。彼等はタークスによって捕縛され、神羅ビルに在る牢に閉じ込められてしまっていた。

ザックスとフリオニールが捕われている牢から見て右側にエアリスとティファ。左側にはバレットとレッドがいる。ザックスとしては扉を壊して強硬突破したいところだが、神羅兵に囲まれてしまったら危険だ。

「強硬突破は最終手段だな。」
「そうだな‥」

フリオニールの脳裏に様々な考えが過る。この世界に来てから5年。様々な事があった。機械と言う物にも初めて触れたし、服装も違う。武器も違えば文字も違う。かつての仲間の中で一番近い、否。今思えばザックスの服装は彼に似ている。
壁側に向けていた顔をザックスの方へと移す。よく良く見れば、彼が背負っているバスターソードも彼と同じ形をしていないだろうか?

「なあ、ザックス。」
「うん?」

フリオニールはザックスの瞳をジッと見つめる。人懐こい笑みを浮かべながら自分を振り返る黒髪の青年。顔立ちは彼の方が男らしいし、色も若干違う気がする。だが、

「…クラウドって、知ってるか?」

フリオニールの言葉にザックスの動きがぴたりっと止まる。そして彼は瞳を大きく見開くと、フリオニールに近寄り、その肩をガシリっと掴んだ。

「フリオニール!!」
「は、はい?!」

そのあまりの気迫にフリオニールは思わず後ずさる。もしかして、聞いてはいけないことだったのだろうか?だが。ザックスは泣きそうな顔をしながら、数度パクパクと唇を動かし、思い切って口を開いた。

「クラウドを知っているのか?」


* *** **


それからフリオニールは異世界での出来事をザックスに語った。
神々の闘争。共に戦った仲間達、イミテーション。カオスの駒との対決。
フリオニール自身、どこまで信じてもらえるかわからず、若干戸惑っている部分もあったのだが、ザックスはフリオニールの言葉を真剣に聞いてくれた。

「つまり、フリオニールは別の次元から来て、色んな場所から集められた戦士達と神々の闘争とやらに巻き込まれた、て言うことだよな?」
「ああ」
「…あのさ、一つ疑問なことがあるんだけど。」
「何だ?」

シンっと静まり還った部屋の中。ザックスは親友の顔を思い出しながら言った。

「クラウドは‥お前より年上だって言ってたのか?」
「ああ。確か‥21歳だと言っていたが‥どうかしたのか?」

ザックスはフリオニールの言葉に首を傾げた。確か、最後にあった時のクラウドは16歳。ザックスが神羅屋敷に捕われていたのが5年だとすると、クラウドは21歳の筈だ。
フリオニールが5年前にクラウドに会っているとすると、今の段階で26歳ということになる。計算が合わない。
首を傾げるフリオニールに「なんでもない」と言い、ザックスもフリオニールとは逆の位置にあるベッドへと腰を下ろす。

「まあ、取りあえず。俺はお前の話し信じるわ。」
「…ザックス」
「だってお前嘘吐くようにみえないし、それにもう俺達仲間だろう?」

ザックスの言葉にフリオニールは胸に溜まっていた物が軽くなった気がした。
五年間。見ず知らずの土地で、知り合いが出来たとはいえ心細くなかったわけではない。
神々の闘争に巻き込まれたと言って、自分が異世界から来たと言って誰も信じてはくれないだろう。そう、思っていた。

「ザックス‥」
「うん?」
「ありがとう」

心からの感謝をこめてフリオニールは笑みを零し、ザックスは照れたように顔をかきながら起き上がり、フリオニールへと手を差し出す。

「改めまして。よろしくな!」
「ああ、こちらこそよろしく!!」

がっしりと繋がれた手。確信など無かったが、どうしてだろうか。この時、フリオニールは何かが始まる予感がした。



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