邂逅


夜空に響くプロペラ音。

「…高いところは、苦手なのではなかったが?」
「ああ苦手だよ。十分苦手!!」

ルーファウスは隣で震える青年の姿に呆れつつ、眼前に迄迫った神羅ビルを眺めた。ミッドガルの象徴たる巨大な建物。暗闇の中に浮かぶそのビルは全て父親の物だ。否、今では『物だった』と言って良いだろう。

「寂しい?」
「いや?」
「じゃあ、何だかわくわくしてるだろう。当たってる?」
「わかっているじゃないか」

青年の言葉にルーファウスは満足気な笑みを浮かべた。


**** *

廊下に転がる無残な死体。女性陣は口元を覆い、仲間達も敵とは言え、その凄惨な光景に眉をしかめている。

そうして辿りついた最上階。神羅の社長。プレジデント神羅の無残な姿がそこにはあった。
バレットは突然の宿敵の死に何とも複雑な表情を浮かべ、レッドは周囲を警戒している。エアリスとティファは今までのこともあるのだろう。口元を押さえ、ジタンがそんな二人を励まそうと色々と言葉をかけているのが視線の端に映る。

「「…セフィロス」」

重なったザックスとフリオニールの言葉。プレジデント神羅の命を奪い、その身を突き刺すその刀は、紛れもない。かつての英雄。そして異世界では彼等の的であった、セフィロスの物だった。

「セフィロス‥あの時、確かにクラウドが倒した筈‥だよな?」

ジタンの言葉にフリオニールが頷く。自分達は確かに見た。クラウドが、自らの宿敵を打倒したその時を。そんな二人の言葉にザックスも握った拳が震えた。
そうして思い知る。彼は、まだ生きているのだと。

そして仲間達が唖然とするなか、突然バラバラっと大きなプロペラ音がこだました。外を見れば、一台のヘリコプターが着陸しようとしている所だった。

ザックスはその様子をみると、エアリス達を先に逃がす為何人かを先に脱出するよう指示を出す。

「皆は先に行ってくれ。俺はここに残って、あいつらを食い止める。」

ザックスの言葉にエアリスもこの場に残ると言った。
しかしザックスは「大丈夫だから」と言い、フリオニールへとエアリスを託し、ヘリコプターが降りた場所へと走った。

「俺も行くぜ!」
「私も共に行こう」

駆けだしたザックスに並んだのはジタンとレッド。ザックスは二人に頷きかけると、背負ったバスターソードを抜き放つ。
そして外への扉を開く。
そこには見覚えのある男性の姿。

「…ルーファウス。」
「生きていたのか、ザックス。」

ヘリコプターから降りたルーファウスがザックスの姿をみて眉間に皺を寄せる。
ザックスに並んだジタンとレッドが其々何時でも戦えるように構えた。

「おや。随分と愉快な仲間達だな、ザックス。」
「愉快どころか、とっても頼りになるぜ!」

手に持った銃を構えながらルーファウスは一歩ザックス達へと踏み出す。
構えた銃口はまっすぐにザックスへと向けられている。

「折角だ。新社長就任のあいさつでも聞かせてやろうか?」
「いらねぇよ!!」

ザックスがバスターソードを構えルーファウスへと切り込む。そうして振りかぶったソレをルーファウスへと振り下ろすその刹那、誰かが二人の間に立ちふさがり、ザックスのバスターソードを払う。
驚くザックスの鳩尾に鈍い痛みが走り、身体が宙に浮いたと思った瞬間、コンクリートの床へ背中を思い切り打ちつけた。

「…がはッ!」
「ザックス!!」

レッドが直ぐ様ザックスに駆けよる。

「危ない危ない」

間に入った青年は手にした槍を肩に担ぎ、おどけたように首を横に振る。

「助かった。」
「本心じゃそんなこと思ってもいない癖に。」
「わかったか?」
「まんまじゃん。」

ルーファウスを守る様にザックスへと槍を構える青年。
ザックスは起き上がると、見慣れたタークスの制服を纏った青年を見てギリっと奥歯を噛みしめる。先程の身のこなし。只モノではない。
レッドもまた再び攻撃の体勢を取った。と、

「…何で?」

ジタンの震える声が耳に届いた。
そうして振り返ったジタンの視線は、ルーファウスを守る青年へと向けられている。

「ああ!ひっさしぶり!!」

元気よく手を振る青年。だが、ジタンはその手を振り返すことが出来なかった。

「何でお前がそっちにいるんだよ‥」
「なんでって言われてもな〜」

青年は手に持っていた槍を赤い片手剣に変化させる。
ジタンの構えていた武器が小刻みに震え、青年もまた一瞬悲しそうな瞳を浮かべた。ザックスとレッドはジタンの変化に何かを感じ取るも、構えを解かない。

「バッツ!!」

悲鳴の様に響いたジタンの声は、ルーファウスの放った弾丸の音がかき消した。



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