授業が終わったら教室にいろと言ったのに。

いや、いるんだが。


「よう、高杉。」


なんで土方がいるんだ。



今日は10月10日。

銀八の誕生日。

そして、俺にとっても大切な日。


だから、不器用ながらケーキも用意したし、家に来るかもって掃除もした。


俺は銀八の隣のクラスで、HRが終わってから会う約束をしていた。


そしてHRが終わった瞬間、急いで銀八を迎えに行ってみれば、なぜか隣に土方の姿が。


「お、高杉お疲れー。」

俺の不機嫌な視線に気付かず、ひらひらと手を振る銀八。


「…なんで土方がいるんだよ。」

「あぁ、部活まで時間あるから銀八とだべってたんだよ。」


しれっと答える土方に殺意を覚える。

テメー、俺の銀八を暇つぶしに使ってんじゃねぇよ。


「そうか。でももう俺たち行くから。」


わざと『俺たち』を強調して言ってやった。

でもまあ土方は鈍感だから、全然殺意に気付いてなかったけど。


「行くぞ、銀八。」

「お、おう。じゃあな土方。」

「あぁ。」


そのまま俺は昇降口まで無言でズカズカと歩いた。

「たーかすーぎくーん。そんな急いでどうしたのー?」


後ろから、楽しそうな声が聞こえてくる。

そんな銀八を無視して靴を履けば、いきなり腕を掴まれた。


「っ!?」


そのまま俺は銀八の胸に。


「高杉、お前ほんと可愛いわ。」


くすくすと笑いながら俺の頭を撫でる。

多分…いや絶対、俺の嫉妬心を見抜かれてた。


「…銀八…タバコくさい…。」

それからしばらく、大人しく銀八の腕の中にいた。


まぁ、たまにはな。


「さて、帰るとしますか。」

ひょい、と差し出される手を、少し乱暴に握ってやると、またくすくすと銀八は笑った。


「銀八。」

「ん?」

「…うち来るか?」

「え、いいの!?行く行く!!」

「銀八。」

「ん?」

「ケーキはショートケーキだからな。」

「うん、じゅーぶん。」

「銀八。」

「ん?」




「誕生日おめでとう。」




「ありがとう。」



今日も幸せだと感じれるのは、このつないだ手が温かいから。


銀八がいるから。


生まれてきてくれて、傍にいてくれて、ありがとう。


銀八。



END.



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