ワンピース

□忘れることなき
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ペンギンが腕を組んで言うとキャスケットがうんうんと頷いている。

「うん、そう思う。けどソラはその事があったからか、すごい私を気にするようになっちゃって…」

海を眺めてから視線を戻すとキャスケットが袖で目を拭っていた。キャスケット、ペンギンが思いっきりひいてるよ。

「そうか、お前達にもそんな過去がなぁ」

「ソラには私が言ったの内緒にしといてね。あんまり思い出したくないみたいだから」

「分かった」

「おぅ、言わねぇよ」

ペンギンとキャスケットからの返事に私は自然と笑っていた。

「ありがとう」

ガチャーン!!

「うわっ、なんだ!?」

船内から聞こえてきた何かが割れる音に驚いた。しばらくすると中からクルーが出てきた。

「あぁ、いたいた!!キャス、ペンギン手伝ってくれ!!食堂でソラが暴れてる!!」

「なにぃ!?あの馬鹿なにしてんだよ」

「今はベポが抑えてるが、もう持たないぜ!!なんか知んないけど、『あのセクハラ熊ヤロー死んでしまえ』とかなんとか叫んでんだけど。ベポがなんかしたのか?」

キャスケット、ペンギン、私の3人の視線がローさんに集まる。ローさんは関係ないと私達からの視線を受け止めない。

「…分かった、いま行く」

ペンギンが応え、キャスケットと共に中に入っていくので、私も行かなければと思い歩きだす。

「…ナギ」

「はい?」

ローさんの横を通り過ぎようとしたら呼び止められた。
ローさんは私の両手を取ると手を開かせた。開いた掌には思いきり握っていたせいで爪の跡が残っていて、若干血が滲んでる。話に集中してたから全然気づかなかったな。ローさんはその跡を指でそっとなぞる。
彼はあまり表情を変えないから何を考えてるかが読めない。彼の手はとても冷たくて熱を奪われそうだ。

「…お前達が乗っていたのは海賊船か?」

唐突に言われた言葉に私の思考は止まってしまった。
どうして分かったのだ。
私は海賊船だなんて一言も言ってないのに。

「…なんで、そう思うんですか?」

「始めに、俺の船に突然乗せられたわりに怯えたような表情が窺えない。と言うことは普段から海賊船に乗ってるか、または過去に乗っていたかだ。それにお前達の目だった…。常に回りを気にして行動してる」

驚いた。
こんな短期間なのに、私達の行動を見てそこまで分かっちゃうなんて。ここまで分かっているなら隠す事はできないな。

「…そうです。
確かに私達を助けてくれたのは海賊でした。でも優しい人達なんです。このハートの海賊団の人達と一緒です」

真っ直ぐ目を見るとローさんは声を殺して笑う。

「クックッ…俺達が優しい、ね…。ちなみにお前達を拾った海賊の名は?」

興味深そうに聞いてきたローさんに、私は笑って人差し指を唇に持って行く。

「それは秘密です」

答えないことを分かっていたかの様にローさんは私の手を放すと、船内に入って行った。

すみません、ローさん…。
今は言えないんです。私達は彼らの邪魔にはなりたくない。もし、私達が彼らの船の乗組員だと知られたら何かに漬け込まれかねない。
私達を助けてくれた人達は“新世界”にいて、尚且つその名声は大きいのだから。

「ナギ、ソラを止めてくれ!!」

「今行くよ!!!」

キャスケットが出てきたので私は回復しきれていない足を少し引きずりながら船内に向かう。




(うがーっアイツ本当にムカツク!!!)
(ソラ落ち着いて〜)
(白熊!!あんただけが癒しだ!!)

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