SHORT NOVEL

□そして誰もいなくなった
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パチパチパチ……

暖かな部屋に響く小さい小さい火の粉の音は、

パチパチパチ……

ただただ、静かに彼らを見守っていた。



【そして誰もいなくなった】




暗い部屋、ただ暖炉の優しいオレンジだけが部屋に色を与えている中で、キラはじっとアスランの寝顔を見つめていた。

すうすうとたてる柔らかい寝息は、アスランがちゃんとキラの近くにいるという事をキラに安堵させ、その安堵が何故か欲情に変わってしまう自分に、キラはほとほと呆れてしまう。
つい先程まで互いに熱と体をに求めあい、理性だとか衆知だとかなんて感情から消去し、ただ無我夢中になって獣の様に絡みあい、そうして二人で一つになったというのに。
こうやってまた愛しい彼の顔や隠されない体を見るとまた体が熱くなってきてしまうのは、まぁ前からだけど。

「コラコラ、元気だねぇ僕。」

相変わらず、と一人ごちるキラはアスハ邸からもらってきたペルシア絨毯の毛触りを肌全身で楽しむ。

今夜の情事の舞台となった、シルクを用いて経糸と緯糸に一目ずつ結びつけた手織の高級絨毯には、飛び散った精液だとか汗だとかがじっとりと染みている。その泥の様な粘着さが何故か心地良い。


パチパチパチ……

今の時代にしてはかなりアナログな、煉瓦積みの暖炉の薪はなくなってきていて、早く檜を継ぎ足さないといけない。
キラは目を細めた。
檜はそう簡単に手に入るものではないのだから、撫とか樫とかもう少し手頃な木材にしろと言ったのはアスランで、でも夜くらい贅沢な思いをしても良いと思ったから、今冬暖炉整備係のキラはこっそりと内緒で、夜のアスランとの時間だけは檜を使う。

キラは静かな火の粉の音を聞きながら、翳りの中から橙色に浮き上がる恋人の顔をじっと見続けていた。


恋人の眉間に皺がよったのはそれからしばらくした後。

「っ……ん…」
「……アスラン?」

寝息も荒くなり、汗もふつふつとにじみ出ている。




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