SHORT NOVEL
□洗濯物
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─・─・洗濯物・─・─
シンはふと窓を見た。
そして今日部活が休みで本当に良かったと心から思った。
暗い外に見えるのはどしゃ降りの雨。
「あ〜あ、こりゃスゲぇや。」
いつのまにかこんなに降っていたのか。
妹は今日塾があるらしいし、共働きの両親はいつも夜遅く帰ってくる。
「あ。」
家族の顔を思い出したところで、シンは気付く。
「──洗濯物っ!!!」
なんで誰もいない平日に毛布を干すんだろう、しかもよりによって自分の毛布を。
嫌がらせか母さん。日々の行いは決して悪くはない家族想いの良い息子だと思うんだが。
しかし、そんな事実だか嘘だか本人しかわからない自画自賛な事を本気で言ったって、庭に干された愛用の羽毛の毛布と枕は、その成分のお陰でもうぐっしょりと萎えていた。
「あぁ〜〜!ったく!!」
ざぁざぁ雨の中、自分が濡れるのより毛布を優先したシンはとりあえず毛布と枕を家の中へと避難させた。
自称家族想いだからって訳でもないけれど、ついでに隣に干されていた洗濯物を次から次へと部屋の中に投げ捨てる。
「……今夜200円もらお。」
日々、行動と還元。
シンは母親にそう言う事にした。
とりあえず全洗濯物を避難させ、自分も急いで戻ろうとした時、もの凄い速さの足音が聞こえてきた。
バシャバシャバシャと言う水音と共に、家の前の路地をかけてきたのは。
「ア、アスランさん!?」
「シン!良かったぁ!家いれて!!」
「うわっ!びしょ濡れじゃん!」
「だから助けろ!!」
「は、はい先輩!!」
珍しく男言葉で言われて、シンは玄関に向かい、1つ年上の先輩である傘もささないアスランを家に招き入れた。
「ふぅ〜〜助かったぁ〜、お家の方はいらっしゃらないのか?」
電気がついてる明るい場所でアスランを見て、シンは口をあんぐりと開けてしまった。
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