SHORT NOVEL

□独裁者が抱く血色の人形
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ある一定の区切りと云う物がある。

効率良く、かつ精神的負担をかからせず、秩序を乱さないように循環させる日々の生活の中で、区切りとか減り張りとか気分転換とかは、めまぐるしく変色されるこの混乱した社会内で己の心身を安定させる為には必要不可欠な物だ。
人としてそれがあるからこそ、基本的生活は安定かつ豊かになるし、その中で結ばれる絆、又は偶然の邂逅や機会などはもしかして一生の中で一番の転機になりうるかもしれない。
だからこそ、戦時中多くの志願者が入所したザフトアカデミーにだって形式上、睡眠時間はきちんとあるし、レジャールームだって至る所に備わっていたし、とにかく最低限の休息をとる義務は全てにおいて適応される。
というか、それは基本的人権の中の基本中の基本だ。



随分と基本的で現実的な話になってしまったが、では、混乱した社会を造った本人がそれをするとなるとどうなるだろう。

造った本人───すなわち、世界の最高峰に立ち、そして今現在の混沌とした世界状態を造り上げてしまった人物にとって、区切りをつけるという事をするとしたら、いったい彼はどういう事をするのだろう。

混沌としている、というのは国民にとってたいへん宜しくない状態で平和な生活を脅かすものだ。よって現在の権力者は国民にとって畏怖べき存在であり、支持するに値しない人物である。
実際、この世界は現在独裁政治に陥っていると言っても過言ではない。
だからこそ今だってクーデターやテロは各地で勃発しているし、独裁者を倒す為に日々戦闘の毎日だ。

人々は嘆く。嘆きながらも戦う、自由を勝ち取る為に。誰もがその先にある未来に怯えながら。

これで三度目なのだ、大きな戦争は。

権力を持つ独裁者は、既に、区切りをつけていたのだ。
何もかもを奪われて、何もかもを奪い返して、自分に追いつめられながら極限の中で独裁者がつけた区切りとは、自分の全て───たった一つだけ手元に残して。




要は、自由の青い翼は地に堕ちたのだ。




それだけだ。








【独裁者が抱く血色の人形】







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