SHORT NOVEL
□NECROPHILIA
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息がかかる程の至近距離。猫なで声で囁くのは甘い甘い毒。肩まで伸びた柔らかい髪を指で絡めて弄ぶ。
彼は息をのみながら、本性を現して変貌した僕をまるで別人の様に見ている。
「ねぇ…どうなの…?」
へぇ、答えに困るんだ。そんなに目をさまよわせる程迷うんだ。
なんで、ねぇなんで、いつもそうだよね、君は何事も全て天秤にかけてじっくりと品定めをしないと満足できないんだよね。
ホント、傲慢。
だから迷う、だからいつも立ち止まる、だから来ない、──いつまでたっても僕の所まで来ない‥!
いい加減にしてよアスラン。君いつまでそこら中漂ってるの、どうして僕を見てくれてるのに僕の側にいないの、どうしていつもそう───僕を不安にさせるの?
「──アスラン、答えて。」
背中に回した左腕をより一層強く回す。強く強く抱きしめて、しまいには爪を立てる。そして右腕は──ポケットの中。
長い長い誘導尋問の中、アスランはとうとう声を出した。
「……あい、…して、る」
「───そう」
ゲームセット。僕の勝ち。
自然に唇がつり上がった次の時。
「──────……!!!!」
穿つ、永遠への鋭い楔。
君の背に深く深く埋める、僕の愛の証。
「…………──ぁ…」
アスランの声にならない声。どうして、と透き通った綺麗な瞳が訴えかける。
君の背に刺さった銀の刃はホラ、一番君に似合う色を見せてくれるじゃない。
床に滴るのは鮮やかな。
今、この瞬間の夕焼け空よりも赤い。
他の誰でもない君の、血。
僕の愛する君の──そう、もうこれは僕の血。
刃を突き刺したまま僕は放心した様な彼に口付けた。君にする初めての口付けはこんなに満悦で心地良い物なのか。
中をくまなく蹂躙し、何度も角度を変え、だんだん崩れてゆく彼の体を抱きとめ、それでもまだ口付ける。
一度、彼が血の咳を吐いた。それでもまだ血だらけの咥内を犯す。
僕も彼も喉元まで血に汚れ、それでもまた彼の舌を執拗に絡めとる。
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