SHORT NOVEL

□NECROPHILIA
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…ふと、激痛と快楽を与えられて光を失っていた碧の瞳がはっきりと僕を映した。

瞬間、紫と碧が交差する。僕の瞳に映った彼の瞳は優しく細められた。
まるで、極上の獲物でも与えられたかの様に、至極嬉しそうに。
僕のくすんだ瞳は、しかしその美しい瞳をはっきりと映しだしていた。

そうして数秒の交錯の後、ゆっくりとその瞳が閉じられる。

碧の瞳から、僕が消える。

と同時に、互いの唇がやっと離れ、彼の痩躯は崩れ落ちて僕に倒れかかる。流石の僕も支えきれず、そのまま床に共々倒れこんだ。










見上げた天井は赤い。見下ろした床も赤い。アスランの体もまた、赤い。

自分の体制を整えて上にのしかかるアスランを抱き起こす。背には、まだ僕の愛の証。抜かないのは、これが君へあげた最高のプレゼントだから。

口元から喉元まで僕と同じく真っ赤に染まったアスランを上に向かせた。
赤の下に隠れた白く綺麗な陶磁器の肌。やっと触れられる。何故かひどい達成感におそわれた。嬉しすぎて涙が出る。

だって、この髪、睫、手の甲、足の爪、皮膚の裏、君自身。
もうこれは全部僕のもの。
くつくつと笑いながら綺麗な睫を一本ずつ触り、感触を楽しむ。

──唯一見れない、碧の楽園。

でも、まぁいいや。
僕はふぅ、と手を止め、アスランを抱え直して天井を仰いだ。そうしないと何故か溢れる涙がとまらないからだ。


邂逅するのは女神の微笑。

だって。
最後に君が僕にくれたものはあまりにも綺麗すぎて。
もうこんなに汚い僕には不釣り合いじゃない。

どうしてだろうね。どんなに汚しても汚しても、君は無垢なままで。僕の物になっても、綺麗なままで。

なら、君と一緒になれた僕も本当は綺麗なんだって、少しは自惚れても良いかな?
もうこれで、僕も綺麗でいられるのかな?


問いかけても答えない体をゆっくりと抱き上げ、僕は真っ赤な部屋からそっと去っていった。







END…‥─
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