SHORT NOVEL

□ゼロ
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ふっ、と

そこでアスランが魅せたのは極上の微笑
紫と翠の瞳がなんとも現実味をおびない


「質問に答えてないなイザーク、舌戦もヘタになった?」
「……‥ッ!!」

イザークは今度こそ切れるほど唇を噛んだ。
あぁと言えばこうと言って人をはぐらかすのはこいつの趣味では無かった筈なのに。

しかもこいつは、おそらくこの真実を一番よく知っているのに、敢えて己から聞き出そうとしている。

「──キラ・ヤマトは‥‥っ!!」
「ぅん?」
「キラ・ヤマトは‥!反クライン派とのMS戦闘中でっPS装甲装着不備が発生し、敵に強奪された‥∞ジャスティスによって粉砕された!!!」

やっとの思いで吐き出しアスランを見ると、それがさも当然の様な顔で壁に寄りかかったままだった。

「ふぅん……∞ジャスティスに乗ってたのって、誰?」
「知らん!!」
「シンは生きているのか?」
「大怪我をしたが、命に別状は無い」
「で、キラの遺体は?」
「‥…まだ捜索中だ…見つかってないッ!」

ストライクフリーダムは、敵に回った∞ジャスティスによりコクピットもろとも粉々に粉砕された。
核爆発をしたストライクフリーダムは至近距離にいた∞ジャスティスを道連れに、そこで大きなキノコ雲二つを咲かせ、見事に散ったのだ。

だからストライクフリーダムも、∞ジャスティスも、はたまたそれに乗っていたパイロットも、全て核爆発ごと世界の彼方に散らばっていったのだ。

「──見つかっていない?何寝ぼけてんだよ、目の前にいるじゃない。」
「‥‥‥…何?」

アスランはにぃ、と笑って自分の右目を指差す。
そこに綺麗にはまっている、紫紺の瞳。

「キラは死んだ、バラバラになった、バラバラになって、そして俺と一つになった。」

うっとりと、まるで心地良い夢を見た少女の様に美しく、アスランは言った。
その顔は全てをねっとりと絡み取るような、妖艶なこの世のものでは無い、顔。

「貴様…‥っ!」

イザークは軍服の袖から拳銃を取り出して素早くアスランに向ける。
アスランはそれでも、恍惚としながら己の眼に触れていた。

ふと、アスランがそのねっとりとした視線で銃を向けるイザークを見る。

「イザークも俺と一つになりたいか?余ってるよ、俺のコレ。」

そう言って右手を床と平行にあげると、その掌からふわりと現れる、翠の眼球。




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