SHORT NOVEL
□そして誰もいなくなった
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キラは、先程と打って変わって苦しそうに息をするアスランに酷く不安になり、座り込んで呼んだ。
「っ……は…ぁっ…!」
「アスラン?どうしたのアスラン!」
「っぁ……」
悪夢でも見ていたのだろうか、ともかく早く起こさせないとと思い、強く肩を揺さぶる。
すると、突然アスランは怖いくらいにカッと目を開けた。
大きく大きく開かれた瞳は、始め焦点があっていなかったが、のろのろと眼球を動かし、やっと目の前で見下ろすキラの心配そうな顔を映し出す。
「キ…ラ?」
「そうだよ。どうしたのアスラン、大じょ…」
大丈夫?と言いかけたキラはしかし、突然アスランに抱きつかれた事により最後まで言えなかった。
「ア、アスラン?」
「…っキラ、キラぁ…キラ…」
こんな珍しい事はない。
いつも求める事に消極的なアスランがギュッと力一杯キラに抱きついていて。
キラ、キラ、と震える声で何回も名前を呼んで子供の様にすがりつく彼に、いったい何があったのかと思いながら、キラは勢いで崩れかけた体勢を整えながらアスランの背に腕を回してぽんぽんと叩いてやる。
「アスラン、大丈夫大丈夫、僕はここにいるよ。」
こんな時に難だが、アスランもキラも何一つ、服など纏ってなくて。
キラはとりあえず、自分の熱を抑えるのに骨身を削っていた。
「はぁっ……は…はぁ…」
次第にアスランの息がどうにか安定しだしてきて、キラはゆっくりと彼の顔を覗き込む。
エメラルドが葉についた雫の様に大きく揺れていて、しかしアメジストを映すとどうにかその力が抜けていく。
「キラ……」
アスランは、息を深くはいた後、いつもの大人びた声で呟きながら体勢を整え、己の右手とキラの左手を絡ませる。
そしてことり、と頭をキラの胸に落とした。
キラはますます不安を覚え、口を開いた。
「アスラン…?」
「…夢…、見た…」
「夢?」
コクリとアスランは俯いたまま頷く。
「……みんな、みんないなくなっちゃうんだ…、目の前にいるみんな…みんな…」
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