SHORT NOVEL

□独裁者が抱く血色の人形
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シンは懸命に走った。

人々の憎しみを一心に買う独裁者と云っても世界一番の権力を持つ者なのだから、さすがに、反乱軍に向かってきた独裁者の配下に下るMS軍は、数多くて手こずりまくったが、それは数だけで、第一次、第二次大戦を共に戦いぬけてきたシンの先輩及び仲間率いる反乱軍は、やっとの事でMS軍を突破し、独裁者が構える要塞を抑えるべく侵攻していた。

シンは前線の反乱軍を率いて一番に要塞に侵入し、慎重に行動するよう後部隊に告げて、一人別行動を取る。
どうしても知らなければならない事があるのだ。
その目的の為にも、今ここで死ぬ訳にはいかない。

ちゃんと、見つけ出して、目を見て、そしてその口から聞き出さなきゃ。

「───アスラン…」

どうしてそっちにいるのか、と。

突然、死角から数人の敵が飛び出してきてシンに切りかかる。だがシンはいとも簡単に突破する。伊達にザフトアカデミーで赤に選ばれた訳ではない。
最後に残ったしつこい敵に、つい致命傷を負わさせてしまう。少しいらついていた様だ。

「……ちっ」

いつの日か独裁者が掲げていた不殺という言葉がちらついた。昔の自分にとってあまりにも酷であった、頂点を行く者の浮き世離れした極論。しかし今の彼にはそんな奇麗事などきっと頭のどこにも存在していないのだろう。
現に彼はこの第三次大戦で既に様々な人を死に追いやった。
ザフトの艦隊やオーブのムラサメ隊、ましてや彼のいつかの仲間でさえ、彼は手を下した。

「くそっ…!」

シンはまた走り出した。

なぁアスラン、どうしてそんな奴についていったんだ?

それだけだ、聞きたいのは。

どうして誰にも相談しなかったんだとか、どうして未だ戦闘に出ないのかとかはもう聞かないから。

だからせめて。
その答えと貴方の顔を────



シンは走った。

そして立ち止まった。

大きく開かれたホールの中。

あった物。

シンは口を開いた。

「………アスラン…」




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