SHORT NOVEL
□キャラメルマキアート
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「何してんですか、アスランさん…」
潤んだ瞳に写されたのは、彼の氷よりもっと印象的な、穏やかな赤。
「……シン…」
涙を隠す為にすぐに俯いて、顔をこする。
浮かび上がってきたのは、安堵と落胆。
紛らわしい真似、しないで。
「大丈夫ですかアスランさん、何かあったんですか」
「ぇ…なんでそんな事…」
「目、真っ赤です」
「あぁ……」
バレバレらしい。
なにかと気にかけてくる後輩は、苦笑しながら隣に座った。
「歩いてたらちょうど貴方が見えて。深刻そうな顔してたから、ちょっと気になったんです。」
「そ、うか…」
「迷惑じゃなかったら相談にでものりますよ。こんな所で一人で…」
ごめん
気にしてくれるなら、どこかに行って
お願いだから、一人にさせて
シンなんかに、この気持ちがわかる筈がないだろ
「──アスランさん」
ぬるくなったキャラメルマキアートは、あと一口。
「……一人で悩んだって、苦しいままですよ」
シンは、ただただ真摯にそう言った。
─・─・─・─・─
先週から少しだけイザークの態度が変だった事。
昨日の朝、女の子とキスしているのを見てしまった事。
イザークの首に赤い痕があった事。
メールを送った事。
約束の時間が過ぎた今でも待っていた事。
悔しくて虚しくて悲しかった事。
全て忘れようとしていた事。
口を開けば、驚く程すらすらとシンに話していた。
それと同時に、驚く程涙が溢れてきて、だからシンはハンカチを渡してくれた。
シンは黙って聞いていてくれた。
「──そうだったんですか…」
シンは、少し分が悪そうに呟いた。
「すいません、無理矢理聞いてしまって」
「い、いや、俺もすっきりしたから…ありがとう」
すっきりしたのは事実。
なんか呆気なく、どこかからっぽになったみたいだ。
シンは目を細めた。
「しっかし何やってんですかねイザークさん。俺、見損ないましたよ」
何をやってるんだろう。
きっともう来ない相手に期待しているのがちょっと馬鹿馬鹿しく思えてきて、アスランはクスリと笑った。
「あ、笑った。」
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