緋桜恋愛遊戯A

□第四十四話
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一体、誰にやられたんだ…?
見回りに行って、怪我を負って帰ってきた者なんて滅多にいない。
幕府に立てつく奴なんて、攘夷思想の奴しかいないだろう。
――でも、一体誰が…?
御尋ね者か、ただの不呈浪士の仕業か…。
部屋につき障子を開けると、永倉が横になっていた。目を瞑っているが、どうやら眠っているらしい。呼吸はあるから大丈夫だ。
眠っている永倉の枕元にいた近藤と沖田。土方は話しかけながら歩み寄る。

「大丈夫なのか…?」

「たいした事ありやせんぜ。ただのかすり傷でィ」

「そうか…」

たいした事がないと聞いて安堵した土方。しかし、また心配事が。
追い付いた山崎が部屋に入り、障子を閉めようとしていた時、土方は話し掛けた。

「他の隊士はどうしたんだ?」

「そ、それが…」

その質問に、山崎は苦い顔をしながら答える。
嫌な予感がした。いい情報は望めない。

「意識はあるんですが…いつ命を落としてもおかしくないと…。辛うじて意識を留めている状態です」

思っていたよりも酷い状況に、土方は眉を潜めた。
二番隊の隊がこんなになるまでやられてしまうなんて…。
全員ではない。見廻りに行った数名だけ。残りの隊士は、見守るようにそばについている。
隊長は酷い傷ではない。隊士の方が重傷。隊長を守っての瀕死の重傷なのだろう。

「うっ…!」

「気が付いたか!?」

小さい唸り声と共に、永倉が目を覚ました。一番最初に視界に入ったのは局長だった。
近藤を見てから辺りを見渡す。見守っていた隊士は安堵の声を漏らした。
辺りを見渡し、ここが真選組なのだと理解した。

「局長…」

「たいした事なくてよかった」
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