緋桜恋愛遊戯A

□第四十四話
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手に入れる方法なんて知らなくて…。
どう対応していいのか解らなくて…。
会いたい。
だけど、どうしたらいいのか解らない。
初めての恋に、戸惑いを隠せない。でも、その戸惑いの中を行き来する焦燥感。
何だかザワザワした。落ち着かない。胸騒ぎがしてならない…。


第四十四話



高杉が怪我をして帰ってきた日の同時刻。その日、真選組屯所内はやけに静かだった。静かで、そしていつもより穏やかだった。ただ、変わった事と言ったら、昨夜市中見回りに言った永倉と隊士数名が帰っていない事くらいだった。今は真夜中の二時。帰ってきていて当然な時間帯。
だけど、それはあまり珍しい事でもなかった。夜の見回りに行ってそのままどこかに泊まって来る奴も中にはいる。
あいつもそうしたんだろう…。土方もそう思って全く気にはしなかった。机の上に並べられている書類に筆を走らせようとした。
――その瞬間。

「ふ、ふ、ふ、ふっ!!ふくッ!!ふくちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「あぁ?山崎…?」

廊下を激しく走る足音と同時に、山崎らしき人物のただ事じゃないだろうという慌てた声が届いた。
相当焦っているのか、どもりすぎその声は、緊急事態を知らせる鐘の声。
先程から胸騒ぎがしてならない土方は、山崎の慌て振りからして緊急事態なんだろうと理解し、山崎が部屋につく前に障子を開けた。

「何があった?」

すぐそこまで来ていた山崎は、土方の前で止まり、興奮覚めやまない様子で言った。

「さ、さっき昨夜…見回りに行っていた永倉隊長と隊士数名が帰ってきました。しかし隊長が傷を負っていて…隊士数名も大怪我を負っていて…」

「なんだと…?」

「意識はあるんですが…あっ!副長!!」

土方は、山崎の報告を最後まで聞かず、その場から走り出した。山崎も慌てながら走り出した土方の後を追う様に走り出した。
永倉は二番隊。傷を負わせるなんて余程の奴じゃないと無理だ。しかも永倉の下についていた隊士も大怪我。
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