Magic Law
□‡真実の扉T‡〜災い〜
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まだ僅かに冬の寒さが残る四月中旬。
「ゴホッ…」
ビルの立ち並ぶ都内のとある通り。そこの中でも一際古い…もとい、オンボロという言葉のよく似合う小さなビルから、幾度となく苦しそうに咳き込む音が聞こえてくる。
「38.9かぁ…」
ロージーが心配そうに覗き込んでいる小さなベットに、真っ赤な顔で呼吸を乱しながら寝転んでいるのは………ムヒョだ。
「フン、微熱だ…」
相変わらずの強気発言も、いつもと違ってハキがない。
「ねぇ、やっぱり暫らく事務所閉めよう?熱もひどくなってきてるし…」
そう言って薬と一緒にあたたかいお粥を持ってくるロージー。
少しの沈黙ののち、まるで呼吸を整えるかのようにゆっくりとした口調でムヒョが口を開く。
「…いくらだ」
「?」
突然の質問の意味がわからず、頭の上にいくつも疑問符が浮かぶ。
見兼ねてか、もう一言。
「…今月の残高」
痛いところをつかれた。口をつぐむロージーに追い打ちをかける。
「…今月の残高、いくらだってきいてんだ…」
……数秒後。小さな、本当に小さな声が返ってきた。
「……630円…」
そう。いつものことながら、今月は特に仕事がきていない。
仕事が無い=まとまった収入がない=残高630円=…………絶体絶命。
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