Magic Law

□‡真実の扉X‡〜危機〜
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ヒトという生きものは実に面白い。

たとえば、一人の少年が世でいうところの『絶体絶命』

……要は生命の危機に瀕しているとしよう。

そのとき、彼の脳内には大きく分けてふた通りの思考回路が存在することになるという。

ひとつは、この状況をどうにかして生き延びるのだ、という強い『生』への執着。

そしてもう一つは……

(……そういえば最近全然シチューハンバーグつくってないなぁ……

ムヒョもいけるって言ってくれた得意料理なのに……)


……このように、今この状況とは全く関係のない、日常的なこと。

要は現実逃避である。

以上、この二つ。

(しばらくつくってないから味落ちてるかもしれない……あー…、またムヒョに怒られちゃうよ……


……て、ん? ムヒョ……?)


そこまで考えて、ようやく今自分の置かれている状況を思い出すロージー。

ロージーが立っているその場所を中心とし、半径10メートルにある数十もの扉は全て開きっている。

そこから一つにつき十人以上の使用人が顔を覗かせていた。

その数、総勢100名ほど。

さらに、その全員が必ず鋭利な凶器を携えているのだ。

対するロージーが持っているのは魔封じのペン1本と札、あとは数種の対霊戦用魔具。

……随分と心許ない。

先程までロージーは、そんな絶望的な状況に置かれたことにより、無意識のうちに現実逃避を試みていたのであった。

悲しきかな、所詮これがヒトの性である。

(ど、どどどっ、どうしよう……!)

一気に込み上げてきたのは果てしない恐怖。

この状況は本当に危ない。

1対100などという構図が成り立つのは、映画や漫画の世界だけなのだから。

……だが、使用人達は一向に動く気配がない。

皆一様にその虚ろな目をロージーに向け、そのままの態勢で固まっていた。

「あ……あの〜……?」

しずしずと切り出すロージー。

――途端、使用人達が全員直立不動の態勢になる。

「えっ!?」

突然のその行動に、一瞬ロージーの思考が止まる。

直ぐ様全員からの猛攻ラッシュが降ってくるのかと覚悟したロージーであったが、いつまでたっても彼らに動く気配はなかった。



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