Magic Law

□‡真実の扉Y‡〜暗黒〜
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「――ねぇ、ムヒョぉ」

暗闇に響く、どこか悲壮感のただよう声と足音。

「ムヒョってば! ねぇ」

先ほどから何度呼び掛けても、振り替えるどころか返事すら返してくれない、恐らく自分の少し前を歩いているであろうムヒョにしびれをきらすロージー。

それというのもつい先刻、何故か正気を失って自分の命を狙ってくる、柏倉氏の使用人達の魔の手から本当に危機一髪……というところでムヒョに助け出されたロージーは今、何故かこの真っ暗闇の中迷うことなく進み続けている彼の後を、ただついていくことしかできないためである。

「ムヒョってばぁ……!」


あまりにも真っ暗な、光の届かない空間は視覚を麻痺させ、不安をあおる。
ロージーはムヒョが『自分の目の前を歩いている』という感覚を無くしてしまいそうになる。

情けない話かもしれないが、視覚の与える影響には絶大なものがある。

使用人達が暴れている部屋から離れた今、感覚を刺激するものは自らの足音のみ。

このような状態がいつまでも続くと、多くの人は正気を失ってしまうことだろう。




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