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ゆちまる様キリリク作品 オレとサクラが喧嘩してしまったのはほんの些細なことからだった……。 *やっぱり愛してるのはお前だけ* 「サスケくん、最近帰り遅いよね。なんで？」 オレが任務から帰って早々にそんなことを言ったのは、オレの嫁であるサクラ。コイツはオレを心配して言ってくれているのであろうが、今はその理由を言う訳にはいかないのでただ一言。 「何でもない。ただ、仲間とつるんでただけだ。」 「本当に…そうなの？私、知ってるんだよ…。今日はサスケくん任務終わったのは17時なんでしょ？だったらどうして帰りがこんなに遅いのよ…。私…ずっと待ってたのに……」 「仕方ないだろ。オレにだって都合とか、付き合いがあるんだよ。」 「それなら、電話の一本くらい入れてくれたっていいじゃない!！」 疲れていたオレはその一言で、とうとうサクラに向かって怒鳴ってしまったのだ。 「うるせぇな!！オレはお前なんかに心配されるほどガキじゃねぇんだよっ!！そんな煩い女は、迷惑だ！出ていけ!！!！」 時間が止まり、沈黙が二人を包んだ。だが、始めにその沈黙を破り時間を動かしたのは彼女だった。 たった一言… 「うん、そうだよね。サスケくんは煩い女は嫌いだもんね…。」 その一言でサスケは、ハッとした。そして、今の自分の言葉でどれだけ彼女を傷つけてしまったのかも…。 慌てて自分の言った言葉を訂正しようと口を開いた瞬間、彼女は悲しそうな顔をしながらも笑ってこう言った。 「今まで、ありがとう。バイバイ…。」 そう言って、彼女は手早く荷物をまとめるとサスケの家を出ていった。 バタンと扉の閉まる音。落ちる沈黙。静かな部屋。 彼は、取り残された。たった独り。彼自身が彼女に向かって叫んだ言葉で…。彼が自分で彼女を手放して捨ててしまった。 彼は、キッチンのテーブルを見た。そこにあったのは彼女が彼の為に作った夕食。いつも、難しい任務に行き疲れて帰ってくる彼の為に栄養のバランスを考えて一生懸命作られた彼女の手料理だった。 しかし、その夕食はすっかり冷めてしまっていた。 彼女は彼の帰りをずっと待っていたから…。 そう、ずっと…。彼が帰ってくるまで…。 どんなに遅くとも、夜が明けてしまっても……。 自然にサスケの頬を涙が伝う。彼女を傷つけて、手放してしまった。 サスケは涙を流しながら、冷めてしまった夕食を食べ始めた。その味は、とても美味しいのに何かが足らなかった。 それは、彼女の笑顔…。 いつも、食事の度に心配そうに『美味しい？』とか『初めて作ったからちょっと味が心配なんだけど、どうかな？』とか、とにかく訊いてくるから、その度に『美味いよ』って言ってやると彼女は決まって『良かったあ』と満面の笑顔を溢していた。 オレはその笑顔にいつだって救われていた。どんなに苦しくても悲しくても、笑ってオレに元気をくれたサクラ。 サクラの笑顔が見たいから、任務だって必ず成功させて帰ってこようと思えた。 それなのにオレは……。 「くっ!！」 サスケは家を飛び出し、サクラを捜しに走った。ポケットにあるモノを入れて。 この日のために用意していたもの。 最近、帰りが遅くなっていた理由。 走り続けた。だが、サクラは何処にもいなかった。サクラの実家や、いのの家も勿論行ってみた。だけどいなかった。 サスケは息を切らしながら木の葉公園のベンチに座り込み俯いた。 「何処にいるんだ、サクラ……」 呟いた。呟いてもサクラが帰ってくるわけではないとわかっていても。それでも呟かずにはいられなかったのだ。 彼女の大切さを改めて自覚してしまったから……。 「サクラ………サクラ…………」 何度も呼んだ。彼女の名前を…。この世で一番愛する彼女を。 「呼んだ？サスケくん」 澄んだソプラノの声。その声はサスケがよく知る女のもの。 ガバッと顔を上げたサスケの瞳に映ったのは、愛しい桜色の彼女だった。 逢いたくて逢いたくて探し回った彼女は笑っていた。 サスケは何の躊躇いもなく彼女を抱き締めた。 「きゃっ！さ、サスケくん!？」 驚いて、体をモゾモゾと動かしているサクラ。 そんな彼女の耳元で、自分の感情を全て詰め込んだ言葉を囁いた。 「さっきはごめん。本当は、お前だけを愛してる。だから…もうオレを独りにしないでくれ…。」 「サスケ…く……」 涙を流すサクラにサスケは優しくキスをすると、ポケットに入れていたソレを大事そうに取り出した。 「サスケくん、それ……？」 「コレの為に、最近帰りが遅くなってたんだよ…。今日は、オレ達の結婚記念日だからどうしてもお前に何かプレゼントしてやりたかったんだ。」 オレはソレのラッピングを取り、中身を取り出すとサクラの白く細い首にかけてやった。 ソレの正体は、桜の形を象ったピンクダイヤのネックレス。 これを買うには、任務の報酬だけじゃ足りなかったから最近、任務から帰ってからもバイトをして金を稼いでいたんだ。 でも、バイトしても貰える給料は少ないから地道に働いた。 そして、やっと昨日ネックレスが買えるまでの金額になったから買ってきたのだった。 「サスケくん、これ高かったんでしょう？それに私、記念日だったのすっかり忘れちゃってて何にも用意してないよ…。」 「お前がいるなら、例えお前が忘れていても構わねえよ。だけど、今日はお前が欲しい…。いいだろ？」 「うん……/////」 サクラが頷くとサスケはサクラを抱き上げ家に帰っていった。 二人の顔には笑顔が浮かんでいた。 end ２,Flame is pain. 真っ暗な一室。光といえば窓から入ってくる月の光だけだ。そして、その光を受けて輝いている私の手の中にあるソレ。 私はその輝きを自分の左手首にゆっくり当て引いた。 その瞬間、ピリッとした痛みが走るが構わずソレを引き切る。 ソレを手首から離すと真紅の血が流れ出した。私はうっとりと手首を伝う真紅を眺めていた。 人はよく火で火傷を負うと『熱い』と言うけれど私はそれは間違いだと思う。 なぜなら火の本質とは『痛み』だからだ。 そうでなければ、彼が操る火遁の術で人々に『苦しみ』という名の痛みが与えられる筈がないのだ。 彼は、古よりうちは一族が人々から受けてきた差別の苦しみを『火』という痛みを与えることで敵をほふってきた。 うちは一族が火遁の術を使えるようになって初めて一人前と認められるのは、そのためなのだと、彼と共に過ごすようになってから知った。 火が痛みとイコールであるなら、『痛み』もまた火とイコールなのだ。 だから、私は自分の体に痛みを与えることで火を操ることができる術を開発した。 それからは、私はその術を使い自分に与えられた痛みを相手に炎の苦しみで返しているために、左手首は傷だらけで常に包帯が巻かれている始末だ。 しかし、彼はそれを見ても何も言わない。理由を知っているから…。 彼が痛みを抱えている限り、私の痛みも消えない。 彼の痛みは私の痛みなのだ。 だから、彼を傷付ける人間には私は容赦なく、ソイツに痛みの炎を浴びせる。 さあ、これから任務だ。今日は誰が私と彼の痛みに焼かれるのか…、そんなことを考えながら包帯を巻き準備を整えると月の光の中に一歩を踏み出したのだった。 end [TOPへ] [ｶｽﾀﾏｲｽﾞ] ©フォレストページ