過去作品〜恋人は専属SP〜
□桂木大地Story
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「そろそろだな」
時計を見ながらソワソワする自分に気づく。
”卒業式”なんていつ以来だろうか…
ちらほらと校舎の中から卒業生が出て来た。
「来た」
一目見ただけで気づく、愛おしい彼女。
「桂木さ〜ん」
俺に気づいた彼女は満遍な笑みで手を振り駆け出した。
「お待たせしました。」
すっ。両手を広げる腕の中にすっぽりと納まった。
「けいこ、卒業おめでとう」
「ありがとう。」
顔だけを上げてこちらを見る。
「////可愛いな」
「でも、袴って走りにくいんですよ?本当は全力投球で桂木さんの元に来たかったのに//」
………。
「いや…袴も…可愛いが…」
まぁ…いいか。
照れ臭いので言いかけて辞めた。
人前で抱き合うなんて、けいこと付き合う前は有り得なかった。
でも、彼女の全てを好きになり、こんなにも愛おしく。
抱きしめて存在を確かめたいと思う。
「桂木さん。私、行きたい所があるんです。」
「あぁ、構わない。行こう」
けいこの案内で車を走らせる。
「何処に行くんだ?」
「ふふっ。秘密♪」
そう言って楽しそうに笑う。
随分走らせ、要約目的地に着いた。
周りを見渡せば、田畑があり、民家が立ち並ぶ。
「ここは?」
「私の産まれた所」
!!!
けいこの言葉にハンドルを握る手が震えじわじわと汗が出る。
「なっ///」
「おばあちゃんに、どうしても卒業証書と袴姿見せたくて…」
何も言わず連れて来たのを詫びるように呟く。
「いや、いいんだ。いずれは挨拶に伺おうと思ってたから。
だが、こっ、心の準備が…」
ドギマギする俺の気持ちを余所に、けいこは笑顔で返す。
「桂木さん。今日は遊びに来ただけだから。そんな緊張しないで?ねっ。」
そう言ってサッと車を降りた。
「けっ、けいこっ…」
ふぅ。深いため息を着いて車を降り、けいこの後に続いた。
「おばあちゃん〜ただいまぁ〜」
玄関で大きな声で挨拶をする。
奥からバタバタと足音が聞こえ、小柄な女性が顔を出した。
「おやおや、けいこ。お帰り…おや?」
おばあさんは、こちらに気づく。
「けいこぉ、なかなかのイケメンだねぇ。けいこの彼氏かい?」
おばあさんは、けいこを肘で突く。
「突然伺って申し訳ございません。桂木大地と申します。」
俺は深く頭を下げた。
「おやおや、今時のイケメンは礼儀がいいねぇ。ささっ。そんなとこじゃ何だから、お上がんなさいな、桂木さん」
「はい。恐れ入ります」
御祖母様はニコニコしながら俺を迎え入れた。
「桂木さん。なぁんも無いとこじゃけど、ゆっくりして行きなさいね。」
けいこの部屋へ通され、お茶を頂く。
「おばあちゃん、私の事ほったらかし。桂木さんの事気に入っちゃったね」
「素敵なおばあさまだな」
「うん!私もおばあちゃんみたいなおばあちゃんになりたいの!」
けいこの顔は昔に戻ったみたいに輝いている。
部屋の中を見回すと、本棚の中にアルバムを見つけた。
「けいこ。あれは、アルバム?」
けいこは指差した方を見る。
「うん。見る?」
「是非。」
頷いた けいこは立ち上がりアルバムを手に取ると、隣に座った。