過去作品〜恋人は専属SP〜
□桂木大地Story
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産まれた頃からの けいこの写真を一枚一枚ゆっくりと見る。
今は亡き母親に抱かれて幸せそうに笑う けいこ。
「私ね。泣かない子だったんだって。だから、お母さんが死んじゃった時も、泣かなかったから、皆に、けいこは頑固とか、強いって言われてたの」
写真を見つめ懐かしそうに呟く。
俺はそっと、けいこの頭を撫でた。
「あ。」
一枚の写真に目が留まる。
けいこと手を繋ぎ笑い合って写る男の子。
「秋月?」
「うん。海司だ」
それから見る写真には、海司が写る。
「ふふっ。海司とも良く遊んだな〜。一日公園で、暗くなっても帰りたくなくて。おばあちゃんに良く怒られたっけ。」
海司との思い出を楽しそうに語る姿に複雑な思いが重なった。
気がつくと全部の写真を見終えていた。
「ありがとう。アルバム。見せてくれて。
けいこの存在は沢山の人を笑顔にするんだな」
俺も、けいこを笑顔にさせる一人でいたい…。
「けいこ…」
「ん?」
顔を上げた けいこは俺を見据えた。
「俺はずっと、けいこの笑顔を見ていたい。」
そして、アルバムの空白に目を落とした。
「これからは、ここは俺とけいこの写真で埋めよう」
「うん…」
「桂木けいこになってくれるか?」
「うん…」
けいこの目から大粒の涙が流れる。
「けいこは泣かない子じゃなかったのか?」
俺はけいこを抱きしめた。
「幸せな涙は流すの…」
そう言って強く抱きしめた体を抱きしめ返した。
「お世話になりました。」
「もう帰るのかい?」
「はい。すいません。今日はバタバタしてしまって。
御祖母様…
近々、改めて挨拶に伺います。今日は無礼をお許し下さい」
「はいはい。そんな畏まって。お待ちしてますよ。
桂木さん。けいこを宜しくお願いしますね」
「はい。こちらこそ宜しくお願い致します」
俺達は、にこにこと笑う御祖母様の家を後にした。
けいこの大切な故郷が
俺の大事な故郷になる日もそう遠くない。
御祖母様に似ている笑顔を見つめ、
幸せを噛み締めた。
〜おわり〜