蝶の檻
□箱庭聖女
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四方を海に囲われた極東の島国。
本土を中心に、大小数えて100以上の島々を連ねてなるその国は、青海原の遥か彼方に広がる大陸から、「神秘の皇国」と謳われていた。
――四季に彩られた現し世の楽園。
海に囲まれた小さな島国は、長年、海の彼方へは目を向けず、島が育んだ古(いにしえ)からの伝統を、幾年も代を重ねて受け継いできた。
その一方で。
近年ではこの小さな島国に興味を示した大陸の国々が海を渡り、少ないながらも交易が生まれている。
初めて触れる異国の技術や文化に触れながら、皇国は独自の文化を発展させていた。
島の中枢に位置する都、皇都。
国を統べる帝の御座す皇都を中心に、建造物から人々の生活に至るまで目覚ましく近代化が進んできているが、文化の発展に侵されない場所も幾つか残されていた。
それが、島国を守護する、「神龍」を祀る土地である。
「神龍」とは、人々が「神」と崇敬する生き物だ。
島の数か所にある「神龍」の住まう地だけは「不可侵」とされており、皇国に住まう人達の暗黙の了解となっていた。
皇国には古くから伝承が幾つもある。
その一つに、「華紋(カモン)」と呼ばれるものがあった。
「華紋」とは、生まれた時から女児の身体の何処かに付いている、「神龍」の加護とされる痣のような印を指す。
この印は全ての女児が授けられる訳ではなく、出生率もその年によってばらばらである。
「華紋」を持って生まれた女児は満13歳になると、皇都が創設した学院に入るよう法令で定められていた。
少女達が入学させられる学院は、皇国内の地域を区分けして五個所配されている。
皇都より送られる通知を元に、少女達は親元を離れて定められた学院へ入る。
そうして、17歳になるまでの4年間。
外界との接触の一切を断たれるのだ。
「神龍」の加護を持つ少女達は、「華の聖女」
学院は、無垢な乙女達の集う秘密の箱庭だった――。