長編

□『夢鉄道』
1ページ/9ページ

「間もなく発車致します」

ふと目を開けるとそこはいつもの電車の中。
私、桜木アリア。高校3年生。
いつも私が乗る夢鉄道は、昔ながらの電車を使っている。
大きな窓がいくつもあって、少し古びた横並びのソファーの様に柔らかい椅子が幾つかある。人が少ない時は特に気持ち良く乗れる。
そして、乗り心地が良い上、雰囲気や香りも穏やかなものだから私は必ずこの電車で眠たくなってしまう。
いつも乗り過ごしてしまわないように気をつけてはいるんだけど、時々やってしまうのよね・・・。でも、最近はめっきりそれもなくなった。・・・はずだったの。

「ドアが閉まります。ご注意ください」
駅名を見ると“喜界”と書いてある。
喜・・・界・・・?
聞いた事のない駅名だった。
私は久々に乗り過ごしてしまったのかと思い
飛び起きた。
同時に電車が動き出した。 −がたん
「わっ!」
ゆっくり電車は速度を上げてゆく。
「あぁー。次の駅で降りなくちゃ。」
良い終わるのと同時にふと気付いた。
この電車には私以外誰もいなかった。
“こんなことってあり得るの?”
偶然にしては少し奇妙な気がした。
“とりあえず車掌さんに聞いてみないと”
そう思い、私は電車の端から端まで探した。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ