藤井秀一郎総受小説

□何も変わらぬ空の下
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4 「心配だから迎えに行ってくる…。」  
 僕の言葉に呆れるように苦笑したリキくんが
 「何の心配ぞ…。女と間違われてナンパされるか、溝に落ちるか、車に跳ねられるかっつう心配かい。」 と洩らす。
 ―ナンパ!!?
 思わず思い描かれる光景、軽そうな男達が、「キミ可愛いねぇ、こんな早朝にお買い物?何なら車で送ったげよかぁ?」とか声掛けて、おそらくあのシュウの事、「五月蝿い。」とか「どっか行け。」とか冷めた眼で呟くんだろう。逆上した男に軽々と車に連れ込まれるに違いない!声を掛けられてから連れ込まれる迄きっと5分も掛からない。
 「危険じゃん!!」
 叫ぶと僕は、背中でリキくんの 
 「お前は買い物に出掛けたお母さんの帰りが待てん子供かっ!」
 という嫌味を聞きながらその場から走り出していた。
 お母さんの帰りが待てない子供じゃなくて彼女の危機を心配する彼氏の気持ちだよ!とツッコミつつ。
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