藤井秀一郎総受小説
□何も変わらぬ空の下
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5 シュウは落ち掛けたニット帽を被り直し、シュウを抱き締めていた僕の手を握った。
シュウの、冷たい手に僕の体温が奪われる気がした。
「俺が居なくなったと?」 口調は優しいものの冷静なシュウの声は何処となく怒っているように感じる。 今こうやって何ともないシュウを見て、自分はかなりオーバーだったなと軽く反省する。
「ごめん…。」
でも、本当に心配したんだ。
と、心の中で続ける。
シュウは呆れたように溜息をつきながら僕の前髪の乱れを指先で直しながら
「ちゃんと帰ってきただろ?」
と僕を見上げた。
シュウは、僕より頭一つ以上低い目線を、懸命に向けてくれている。
一見、小学生高学年か、中学生にしか見えないシュウがたまに見せる大人びた表情…僕を安心させようとちょっと…ううんかなり背伸びしてくれるのが嬉しい。