藤井秀一郎総受小説

□その答えはNGですか?
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 暫しの沈黙…。耐えられなくなった俺が第一声を発した。
 「だって!本当に判らないんだもん、しょーがないだろっ!?気が付いたらすっごい不快な顔されたり泣き出しそうな顔されて漸く気付くんだよ!」
 とことん人として終ってるなぁ俺…。なんだか虚しくなってきた。
 「誰かに傷つけられたって言われたの?」
 ノブが労るような声色で尋ねてくる。
 小さく首を振るとノブが柔らかく微笑んでくれた。 「でも…今日の奴も『お前、何言ってんの?』って顔してた。」
 何って答えてやるのが正解だったのか判らない。
 「まぁ、相手にしたら、どんだけ俺様なんぞい!?思うたんじゃろなぁ。」
 (俺はそんな風には思ってないんだけど…。)
 「大事なんはなぁ、お前がどういうつもりで言うたかやのうて、相手がどう取ったかなんやぞ?」
 力也の言う事は最もだ。 無意識に思い溜息が漏れる。
 「俺って相当馬鹿なんだなぁ。皆ならどう答えた?」
 皆の顔を一巡する。
 各々、思い悩んでいる風だったが、初音がニコリと微笑むと
 「とても良く似合ってるけど、校則で染毛は禁止だから直した方が良いかもね貴方は黒髪の方が素敵よ?…って言うかな。相手に気遣いながら、そしてやんわり注意してあげるのが親切じゃないかしら?」
 と言う。
 (見ても無いのに『似合う』とか『素敵』とか言うんだ…。)
 多少の驚きを感じたが建前ってやつか…と納得した 「夢も、初ねーちゃんと同じかな。取り敢えず褒める…かな。」
 (夢みたいに酸いも甘いも噛み分けてない年齢でさえそんな業を修得してるんだ!)
 更に驚いた。
 しかし、次の太の言葉にちょっと安心した。
 「僕なら、ふぅん。で済ますよ〜?だって、興味ないし。」
 そうなのだ!興味が無いから言葉が出ないのだ。
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