藤井秀一郎総受小説
□ぼやき。
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2 子供の欲の器は大きくてどんなに愛情を注がれても満腹になってもすぐそれらは減っていて…穴でも空いてるんじゃないか?と思うくらい貪欲で…どんなに与えられても満足出来なかった。
我儘なのは判ってる。
我慢を覚える第一歩だって事も…。
でも、抑えの効かない俺達は違うモノで、埋め合わせする術を身に付ける。
友達、万引き、セックス…。
俺の場合は近所の男。
沢山のキスと甘い菓子、与えられて満たされた。
貪欲な子供は、それがいけない事だと疑いもせず、器が一杯になって、それらが溢れだしても…溺れても尚求め続けた。
今となっては笑い話。
子供のちっぽけな出来心 どうしてあんなにあらがったのだろう。
母親の無理強い、大人の裏切り、先生の決めたエセルール…。
こんな大人になりたくない。
そう思った俺の身体は成長を止めた。
正しくは事故による後遺症なのだけど、皮肉な形で俺の願いは叶った。
快楽も知ってるし、大人の都合も理解出来るようになった。大人の裏切りにもだいぶ慣れて、金を稼ぐと言う事も判った。
母親の心中行為は理解出来なかったが、死にたいという気持ちがどんなモノかは判った。
結局、俺達は子供だったのだ。
子供と書いて、未熟…。 心も体も未発達だった俺達は求め、与えられるしか愛情確認を知らなかった。
世界は広い。
俺の中のそいつが言った 総て壊そう。
と、悪魔の声で囁くのだ お前の世界を壊しても、世界は広い。
誰も目も止めてくれないさ…。
悪魔が直接、脳に語り掛ける。
その声は、俺を無視して心に直接囁き掛けた。
そして、そいつは…いや俺は恐慌に及んだ。
俺の眠っている間、俺の手足を使い、俺の知識を得て、俺の脳細胞を活かし… 記憶の無い事情。
夢想のようなリアル。
だけど、ソレも俺。
あの悪魔は俺の願望だったのかもしれない。
俺は俺が知っているより悪どく、冷酷なのかも知れない。
俺なんか淀みきった水の底、ずっと沈んでいれば良い。
浮上しては駄目だ。
きっと誰かを傷つける。 判ってる。
判ってるのに、俺はまだ子供のまんまで、貪欲に手を伸ばしている。
目蓋を閉じれば、いつだって暗い世界に行ける。
この世界が永遠に続けば良い…と願う。