藤井秀一郎総受小説
□秘め事は蜜の味
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秘め事は蜜の味1
「退屈だ。」
潮の香りを含んだ風が、職員室の開け放たれた窓から飛び込んでくる。
退屈だ。
娯楽も居酒屋も、コンビニさえ無いこの島には、俺達教師と、生死すらどうでも良いガキ6人しか居ないこんなクソつまらん島に派遣され、俺の心は腐りきっていた。
職員室で一人、ボンヤリと海を眺める俺の耳に、軽い足音が届いた。胸を騒つかせる。この軽い足音は男らしい力強いものではないしなやかで和らかな女の足音…。
扉に目をやると、掌には充分余る大きな胸を揺らしながら学園で唯一の女性教師、甲斐ユキノが入ってきた。
「やぁ、ユキノ先生。ご苦労様です。」
俺は胸の突起の場所を想像に任せながら、しかしそれを悟られないよう気を遣いながらありったけの笑顔を向けた。
「桑館先生…ご苦労様です。」
彼女が薄く笑う。
彼女にデスクチェアーを差し出す。
彼女は軽くお辞儀をしながら椅子に腰掛けた。
大きめな尻が椅子に沈む 彼女は溜息混じりに
「秀一郎くんに、何を教えていますか?」
と尋ねてきた。
秀一郎…あぁ、あのこまっしゃくれた糞餓鬼か。
「そうですね、彼には中学3年レベルのプリントをさせていますよ。それが何か?」
小学生がつまづくのは大抵皆同じだが、あいつは違った。俺には、取り残された他の出来損ないをどうやって理解させるかのほうが重要課題なのがしかし甲斐ユキノは違うらしい。次々進むのは素晴らしい事だと思うけど残された子はきっと気持ちが焦る筈。それなら彼に、皆が追い付くのを待って貰うのが本当じゃないか?…と言った。
「だから…私は今は彼には読書という自由時間を与えています。でも、これって正しい事なんでしょうか?」
真っ直ぐに見つめてくるユキノのふっくらとした大きめの唇に吸いよせられるよう顔を近付ける。
ユキノは、俺との距離を保つよう少し離れたが俺はニヤリと笑みを作り、
「秀一郎の事は気にしなくて良い。僕が少し彼と話しましょう。ユキノ先生はいつものように笑顔で居てくだされば良い。」
と繋げた。
ゆっくりと頷くユキノをわが胸にしまい込み、眼鏡のフレームに指をあてがう 秀一郎…か…。
あっちの躾に必死になってこっちをないがしろにしすぎたか…。
大人に逆らうとどうなるか充分に教えこまなければならない。