藤井秀一郎総受小説
□自慢のカレシ
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今、僕は激しい悩みを抱えている。一つは、恋人が同性っていう事と、その恋人は「俗世間」を嫌っていると言う事と、一緒にお出掛け…つまりデートをしたことが無いって言う事。
家は、友達7人で同居中の為、あんまりエッチな事も出来ない。だから、時々(その為だけに)外で逢う事はあるけど、現地集合現地解散…が大抵なのだ。
たまには、水族館とか、海とか、映画とか、動物園とか…恋人同士らしい所に行きたい…とか思う。
(でも…シュウはきっと「くだらない。」って言うんだろうなぁ。)
深い溜息を付きながらバイトに行く為、スニーカーに足を突っ込む…と同時に僕のポケットで携帯が震えた。
発信先は「公衆電話」。発信者は誰か直ぐ判った。
「シュウ?」
「ノブ、これからバイトだろ?」
やっぱりシュウだ。
どうひいき目に見ても…この場合聞く…かな?少女のものとしか思えないシュウの高めの声。
「ノブ、早番って言ってただろ?店行くから一緒に帰ろうぜ?」
珍しいシュウのお誘い。 口調はいつもの強気なモノなのに「帰りたいな」という空気を漂わせていた。
玄関の引き戸を開けながら「うん!」と即座に答える 朝の心地よい風に当たりながらついついニヤニヤしてしまう。
隣のお婆ちゃんの「おはようございます。」の声にお辞儀をしながらもニヤニヤは止まらない。
僕のバイト先はレンタルビデオショップ。高校の頃からバイトしている店の為今ではバイトリーダーまでさせて頂いている。朝は開店の準備やら返却ボックスに返却された商品の入力、そして売場整理、新入荷の準備にレンタルアップ商品の販売切り替え処理…とにかくこれだけで午前中が終わる。
プラス接客が忙しい日には昼食を取っている暇がない位だ。
今日は遅めの昼食ではあったものの取り敢えず食事にはありつけた。
時計の針を確認する。
(後、一時間。)
顔がほころぶ。