脱色
□信じるのは…(前編)
(平→ひよ)
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その気持ちのはじまりは、小さな噂話だった。
「猿柿副隊長って、浦原隊長と付き合ってるんだろ?」
正直、その話を聞いた時は、呑んでた酒を噴き出しそうになった。
気の置けない部下達との小さな宴席。酒が入れば自然と男女の話題にもなる。
先日現世で十二番隊と共同で任務をこなした際、
ひよ里に庇われた部下が、彼女に憧れている、と言った際に出てきた話だった。
むせて咳込む真子に、大丈夫ですか、と藍染が気遣わしげな声をかける。
「な…なんやそれ!ありえへんわ!どっから出たんかいなそないな話」
最初に話を持ち出した部下は、有名ですよ、と何の事もないように言った。
つられたのか他の隊士までもが、あーそんな気はする、と言い出した。
やれ時々交わす目線が妙に親密そうだとか、ある甘味処で二人で餡蜜を食べているのを見ただとか…
状況のひとつひとつはなんてことはない事ばかりなのだが、積もり積もると、そういった結論に、話が行ってしまうようなのであった。