脱色
□名前を呼んで (浦ひよ、過去)
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ぽん、とボクはひよ里サンの両肩に手を置き、ものすごく真剣な顔をしてみせた。
「ひよ里サン」
ひよ里サンがわずかに後ずさる。
「な、なんやねん、ハゲ…」
「ひよ里サン、ボクは貴女に、名前を呼んでもらいたいんス」
ボクはじっとひよ里サンを見つめる。
ひよ里サンも、ボクの事を見つめ返してくれてる。
お互い無言のまま。
ほんの数秒のような気もしたし、とてつもなく長い間だったような気もする。
ひよ里サンが僅かに俯いて、
「…きすけ」
ちいさな声だった。
けど、確かにボクに向けられた声。
ボクはちょっと、イジワルをしてみたくなった。
「…誰かボクを呼んだような気がしたけど、よく聞こえなかったっスねぇ?」
ひよ里サンの耳元に唇を寄せ、そっとささやいてみる。