脱色
□平子真子、受難の一日 (中編)
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「いいじゃないスか、ひよ里サン。食べづらかったら、ボクがはい、あーんってぃたっ!」
今度は喜助の顔面にひよ里の跳び蹴りがめり込む番だ。
「…俺、やっぱし子供用の椅子でええわ」
ようやく落ち着いて卓につく頃には既に半時近くが経ち、急いで食事を済まさなくてはならなかった。
にもかかわらず、真子は。
「手が小さぁて箸が持たれへんねや。ひよ里、食べさせてや」
あーんと口を開ける真子を無視し、
「おばちゃん、悪いけど匙持ってきてやー!」
真子はわざとらしく、くっと呻いて、
「ひよ里…冷たなったぁ…ひよ里が今の俺んくらいの頃には、
箸がよお持たれへんひよ里に、あーんて食わしてやったったのになぁ」
ひよ里は耳まで真っ赤になり、真子の顔面に裏拳が入る。
「そないなオシメしとったような頃の話を持ち出すなやハゲ!」