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はい、遠呂智に成り変わった日本人っす。

突然ですが、生き物見つけました。

なんて言うか、なんて言っていいのか。
見つけたのは遠呂智軍の主力人種(?)のあの肌の青い彼ら。
なんと家の近くに村があって、そこでふつうに農業して生活していました。子どもも女の子もいたよ。

彼らから聞いた話だと、国はなくて、でもこんな村はこの世界にたくさんあって、正確な人数はよくわからんのだと(そりゃ戸籍制度なんてないしね。まず国がないんだから)
何となく体のでかい者たちは体のでかい者たちで村を作っていたりもするが、中には人型(ふつうタイプの彼ら)の村のなかにいることもあるんだとか(力仕事が助かるって言ってた)。
あの屋敷はずっと昔からあって、誰も入れなかったから勝手に使ってくれってこと。

で、なんでか様付けされた。

あの屋敷に住んでいるかららしい。
えー、そんな理由って。見た目普通の日本人だぜ?尊敬される理由なんてないのに。
モヤシじゃないけどマッチョでもないし。
まあいいか、と庭の一部を畑にしたときに思った。
だってなんかいっぱい種くれたし。
おかげで畑がずいぶんと立派になったし、なんでも採れる。
もちろん、種をくれたのは彼らだから還元するよ。できた野菜や果物を彼らに配るのも、収穫がやっと一定して来たからできるようになったから。
そのたびになぜかこちらがもらう分が多くなる。
…米1俵とかものすごく悪い気分。

しかし彼らは本当に好意でくれるから無下にできない。

そんなにしなくてもいいのになあ、と思うけど、ここは争いがなく穏やかだし、毎日が精進料理状態なのでいいかなあとも思い始めてきたのはこの世界に溶け込んだ証なのかもしれない。

俺の順応性ハンパねえなあ…

おろちさま!と籠いっぱいの梅を持って屋敷に走ってきた彼らの子どもたちと村人に、頬が緩むのを自覚しながら思うのだ。

「梅酒にして!」
「飲むのは大人になってからだぞ?」
「漬けたうめを食べるのはいいでしょう?」
「うーん、まあいいか。半分は梅干しにすっかね」
「やあったあ!!」
「できあがったら、村に持って行くからなー」
「遠呂智様ありがとうごぜえます」
「いつも貰いっぱなしだからな。このくらいさせてくれ。あ、あとそこの野菜をいくつか持っていっていいぞ。なかなかいい出来だ」
「あ、ありがとうごぜえます!」
「おろちさまありがとー!」
「おう。ほら、走るんなら前見ねえとこけんぞ」
「だいじょうぶー!!」


きゃっきゃとはしゃぐ子どもたちに、慕ってくれる村人たち。
こんな生活が長く続けばいい、そう思うことを許してほしいと思った。


(彼らを、戦に出したくはない)

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