ゾルママ原作
□2
1ページ/1ページ
「じゃ、あたしはちょっとどんな人がいるか見に行ってくるわ」
「ん?知り合いでもいんの?かあさ………アニー」
「ちゃんと言いなおしたね、えらいえらい。
まあ、知った人がいた気がしたから、会いに行ってくるわ」
「わかった。じゃあ、またあとで」
「ええ」
くしゃっと唯一夫に似た髪の頭を撫でて、キキョウ…アニーは人ごみに紛れた。
うーん、相変わらずキルアの髪の毛やわらかい。
「(あの人も、お義父様もやわらかいものね。遺伝ってすごい)」
そんなことを思いながら、入ってきたときにみた見覚えのある髪色を人だかりをかき分けながら探す。
円を使えば簡単だが、今回は念を使わないと決めた。だってここの大半の人間は念を知らない。
間違って発なんか当てちゃった日には相手が即ご臨終だ。(そんなこと絶対しないけど)
なのでいつもと同じように、常人と同じぐらいのオーラに抑え、行動する。
自慢じゃないがこの状態で念能力者だとばれたことはない。
若いころの修行のたまもの。母は実に容赦なかった。
ああ、嫌なこと思い出した。忘れよう。
さて、念が使えることがばれて困るのはこれだけではない。
ハンター協会の会長は言わずもがなだが、その辺の試験官に目をつけられるのも面倒くさい。
要は保身も兼ねて念を使わず、さらに名前なんか名乗った日にゃ一発でばれるので(だってゾルディックだもの)名前容姿を偽って受けている。
考えながらゆったり探していると時間がだいぶ経ってしまったようだ。
受験者も徐々にだが集まってきたようで、すれ違った男は212のプレートを付けていた。
「(…いない。そして周りがむさい)」
やはり見間違いだったか。いやしかし自分の子どもセンサーがここにいるとアラームを鳴らし続ける。
アラートではなく、歓喜のアラーム。
はやる胸を抑えつつ、壁際に移動した時。
「…いた」
そこにいたのは赤髪の奇術師。
トランプタワー建設の真っ最中らしく、やけに真剣に(でも口元は笑ってる)トランプを積み上げている。
「こんにちは」
「こんにちは♦」
「ずいぶん大きなトランプタワーね」
「すごいだろ♦」
話しかけて返ってきたのは、人受けのする笑顔。邪魔するなというように、目の奥は笑っていないが。
…気付かない、か。
思わずため息をついたとき、ヒソカの眉がピクリと動いた。同時に彼からすこしずつ殺気があふれだす。
周囲は殺気におびえ、こちらを遠巻きに見ている。
そんな様子にまたため息をついて、今度はキキョウの声音で音量をおとして話しかけた。
「久しぶり。全然来てくれないから、ミルキなんかもう覚えてないわよ?」
殺気が、消えた。
すこし目を見開き、キキョウさん?と呟く彼に、今はアニーよ、とキキョウはいたずらっぽく笑った。
それにまた笑って、ヒソカが返す。
「…それは悲しいな♠でも自業自得だし、仕方ないか♣」
そうして二人は、再会を果たした。
ハンター試験会場到着受験者:346名(現在)