ゾルママ原作

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久方ぶりにあったヒソカといくらか言葉を交わし、ふと周りを見渡すとだいぶ人数が増えていた。…暑苦しい。

「人数集まってきたし、もう行くね」
「うん♦」
「ああ、あたし今回一般人として受けるから、そのつもりでね。邪魔しちゃ嫌だからね」
「んー…どうしようかな♣」
「邪魔したらもう二度と会ってやんない」
「♠」

じゃあね、と手を振ってヒソカのもとから離れる。ヒソカは昔と同じように、笑って手を振り返してくれた。
あの笑い方は、昔と変わらない。その辺かわいいと思う。

戻ってくれば、キルアはいくつかの空き缶を持っていた。…ジュースなんて持ってたかしら。
まあいいか。


「やほ。ただいまキルア」
「おかえり。会えた?」
「うん、ちょっと奇抜になってて驚いたけどね」
「奇抜って」
「あれは奇抜って言うしかないわね」


いつの間にかピエロになってるんだもの。彼的には奇術師らしいけど。
見目は立派なピエロじゃないか。


「(ちゃんとすればイケメンなのにね。残念なイケメンってやつかしら)」


心内で思っているときにジリリリリとベルの音がした。音のもとをたどれば、ベルではなくて首っぽいものがジリリリ言っている。
それを持っている人物は、おそらく試験官だろう。
スーツにくるんとした口髭の、執事のような容貌の男性。…うちの屋敷にはなぜかあんな執事がいないが。
未だジリリと言い続ける首(他になんて言えばいいのか分からない)に試験官は指をあて、音を止めた。


「只今を持って、試験受付け時間を終了いたします。
では、これより、ハンター試験を開始いたします」


ピン、と空気が張った。
あたしとキルアはそんな空気もどこ吹く風、ひょうひょうと周りを見渡しているが。
と、ヒソカと目があった。にまにましながら他の受験者たちを見ている様子を見て、どこで育て方を間違ったのだろうと首をかしげたくなる。
…過ぎてしまったものは仕方がないが。

そんなあたしたちに構うはずもなく、試験官はこちらへどうぞと真っ暗なトンネルへと受験者たちをいざなう。


「さて、一応確認いたしますが、ハンター試験は大変厳しいものもあり、運が悪かったり実力が乏しかったりすると、ケガをしたり死んだりします。
受験者同士の争いで再起不能になる場合も多々ございます。
それでも構わない、という方のみついて来てください」


受験上の注意とやらだろうか、試験官は朗々とその門限を受験者に伝えトンネルを歩き始めた。
もちろん、残る人物などいない。


「承知いたしました。第一次試験404名全員参加ですね」


カツン、カツンと靴を鳴らして歩く試験官についていく受験者。
アニーもキルアものんびり後ろをついていっていたが、そのうち前の集団の様子がおかしいことに気づく。


「?なんだ?」
「…前の方が走り出したみたいね」
「は?なんで?」


そんなの知らないよ、とアニーが返そうとした時、試験官自らが答えになる言葉を言い放った。


「申し遅れました。私、一次試験担当官のサトツと申します。これより皆様を二次試験会場へ案内いたします」


二次?と誰かが呟いた時、もう一次試験は始まっているのです、とサトツが言う。


「二次試験会場まで私についてくること。これが一次試験でございます。ただし場所や到着時刻はお答えできません。ただ私に着いて来てもらいます」


要は唯走るのね。と、もう歩きから完全に走りにうつった状況で思う。
持久力に精神力まで試す、うまくいけば受験者激減の試験内容。

まあ、余裕か。と、周りが息を乱して走るなか、息も乱れていないアニーは思うのだった。


ハンター第一次試験開始
受験者数 404名

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