ゾルママ原作

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キルアと走り始めてすぐのころ、


「おい、ガキ!汚ねーぞ!」


スーツ着たお兄さんに難癖付けられました。キルアが。
なんでもスケボーに乗っているのがお気に召さなかったようで。
別に反則でも何でもないので、いいんじゃないかと思っていると、キルアは同い年くらいの少年に興味を持ったらしく、スケボーから降りて走り始めた。
というか少年に見覚えがあるのは気のせいか。


「オレ、キルア」
「オレはゴン!お姉さんは?」
「あたしはアニー」


ゴン、か。ファミリーネームは聞きそびれたが、名前と髪の毛からしてジンの血縁だろう。というか絶対そうだ。そっくりすぎる。
ふむ、と観察している間に、眼鏡のお兄さんの年齢の話になり、美人さん…クラピカくん(男の子だった)が離れて行った。
10代であることがよっぽど驚きだったらしい。他人のふりを決行中だ。


「きっとあたしのこと聞いたら卒倒するわね」


ぽつりと呟いて、クラピカの横へ行き、後ろの彼らが追い付いてくるのを待ってみる。


「何か言ったかアニー」

聞こえたらしい。


「ん?クラピカはかわいいねえって」


耳聡いなと思いながら、にこりと笑って別のことを言う。
嘘ではないからいい、と思う。うん。
案の定、クラピカの目がじと目になったが。

「……男はかわいいと言われても嬉しくないぞ」
「あら、褒めてるのに。じゃあ、クラピカは綺麗ねえ」
「…もういい」


少し疲れた様子になってしまったクラピカに笑いかける。
すこしからかい過ぎたらしい。ごめんね。


「レオリオ!!」


ゴンの声がした。少し振り返った見れば、レオリオが足を止めている。
見た感じと彼の動作から、彼が限りなく一般人に近いことは分かっている。
むしろ、彼がここまで走れたことはすごいことだと思う。
彼は脱落かねえ、と思っていると、予想だにしない大きな声が轟いた。


「絶対ハンターになったるんじゃーーーー!!
くそったらあああああーーーー!!!」


うおおおおおお、と一気にあたしとクラピカのところにまで駆けてきたレオリオに、クラピカはなんだか引いている様子。
ふと、レオリオが荷物を持っていないことに気づく。
あたしは余裕なので持ってきてあげようかなと思って後ろを振り返れば、ゴンが釣りざおで荷物を手元に持ってきているところだった。


「「おー、かっこいい」」


呟いた言葉は息子と同じもので。
親子なんだな―と感じつつ、荷物の心配がなくなったのでアニーはクラピカの隣に戻った。


終わりの見えない階段があらわれて、試験官のペースは上がったものの全体のペースは格段に落ちて。
階段などお構いなしでつったか走っている間にアニーは一番前、試験官の後ろに来ていた。


「アニーさんだ」
「あら、ゴンにキルア」
「アニーいつの間に前に出てたんだ?」
「ついさっきだよ。あと、ゴン、あたしのことはアニーでいいよ」
「うん、わかったよ」


よしよし、と硬めの髪の毛をわしゃわしゃかき混ぜると、すこし照れたように笑うゴン。かわいい。そこ、拗ねないキルア。
仕方なく同じようにかき混ぜてやれば、嫌がるそぶりを見せつつも喜んでくれた。ツンデレだ。
いったい誰に似たのやら。


階段はまだまだ続く。
目の前の凛とした背中を汗だくになって(一部除く)、受験者は追いかける。

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