ゾルママ原作

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ヌメーレ湿原、別名“詐欺師の塒”。
文献で見たときから気になってはいたものの、湿原と言うところが何となく嫌で訪ねなかったがこんな形で訪れることになろうとは…人生とはよくわからないものだ。
試験官の説明を聞きもせず、感慨にふけっていたアニーの思考をさえぎるように大声がその場に響いた。

「ウソだ!!そいつはウソをついている!」

声の元に視線を向ければ、そこにはぼろぼろになった男性。何でも自分が本物の試験官で、今ここにいる試験官は偽物だとか。

「(何故そこで動揺が走る…)」

受験者達はイレギュラーの存在に動揺したらしい。どちらが本物なのか迷っているようだった。
血のにおいを隠し切れていない、しかもあからさまに獣の匂いのするのに気付きもしないとは…。
まあ、匂いなんて普通の人間はわからないか…。

「ねえ、アニー、」
「ん?何、ゴン」
「あの人なんだか、」

動物のにおいがする、ゴンがそう言った時だった。
トランプが男性(おそらく人面猿)の顔面に突き刺さったのは。

「これで決定♦そっちが本物だね♥」

トランプを投げたのは言わずもがなヒソカだった。
試験官にも投げられていたのか、試験官は何枚かのトランプを受け止めていた。
試験官は、自分に対し攻撃したヒソカに忠告したあと、他の受験生にこの湿原について再度忠告し、再び走り出した。
というかゴンの鼻の良さに驚きだ。訓練しているキルアと張るほどの並はずれた体力と言い、なかなかの逸材なのではないか?

「(まあ、ジンの子だものね)」

あの野性児の子どもだもの、仕方がない。カエルの子はまさしくカエルだったということだ。
となるとうちの子たちはどうなんだろう。
……だめだ、似てない。そして父親似だ。
自分と似ているのは髪くらいなのではないか?キルアなんかまんま父親似。ああでも目元はあたしか。
うーん、と唸りながら走っていると、隣を走っているゴンに心配された。心なしかキルアも心配したような顔をしている。
子どもに心配されるなんてまだまだね、と内心苦笑しながら、何でもないよと笑顔を振りまいた。

しばらく走っていると、前と後ろとでだいぶ距離があいたようだ。
そして後方にはクラピカとレオリオ、そしてヒソカがいるらしい。
ヒソカは先ほど人面猿を倒したせいか、衝動が抑えきれず、発散したくてうずうずしている。
ねっとりとからみつく視線と殺気が、我が子ながら少し気持ち悪い。育て方を本気で間違えたかと思案する。

そんな中、敏感にそれを察知したキルアは、前方にいた方がいい、とゴンに言って教えていた。

「レオリオ―!クラピカ―!キルアが前に来た方がいいってさー!」
「どアホ―!行けるもんなら行っとるわい!」
「そこを何とかがんばってきなよーー!」

何とも緊張感のかけらもないやり取り。
ゴンが後方二人に向かって叫んだのだ。
無論、彼らの体力やペース的に前に来ることは難しい。ゴンもわかっているのか、特に粘って言うこともなく、後方から聞こえる悲鳴に、ただただ心配そうな面持ちで走っていた。
時だった。

「ってえーーーーー!!!!」
「レオリオ!!」

叫び声に、後方に勢いよく駆けだすゴン。
キルアが呼ぶもゴンは振り返らず、まっすぐに駆けて行った。
あの馬鹿、呟いてキルアは前を向く。

「心配?」
「…少し」
「そう。行く?」
「ううん。行かない」

ちょっとおしいけど、これでだめならそれだけだったってことだろ、そう言いつつ、キルアの表情は少しだけ影っていた。
 

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