エドリル、マシュティナ

□ふしぎなリルム〜プロローグ〜
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わたしにはひみつがある。
誰にもいえない、おじいちゃんにもいえない、ひみつ。


それは、大人になる魔法。





ふしぎなリルム






「夕方までには戻るね。おじいちゃん」

そう言って、飛空挺を飛び出して、わたしはジドールのアウザーさんの屋敷の一室に忍び込む。
そこは、今ではわたしのアトリエになっていて、使いかけの画材がたくさんあるの。
暇が出来るたび、わたしはそこで絵を描いた。

でも最近は、おしゃれするためにここにくるの。

ママの服、ママのリボン、ママの香水、ママのおしろい。

ママの使っていたものが、どんどんふえていく。
サマサから、ママの使っていたものを持ち込むたびに、わたしはどんどん悪い子になっていく。

絵を描くためにって、嘘言って持ち出して、
今日も絵を描くからって、嘘ついてここに来て、
わたしはこれから、男の人に会いに行く。

皆も知ってる、あの男の人に。




鏡の前の、10才のわたし。

これが今のわたし。


画材用具を入れたカバンから、わたしは瓶を取り出した。
キャンディーの入った瓶。
赤いキャンディーと青いキャンディーがたくさん詰まった瓶。

その中から、わたしは青いキャンディーを一粒つまんで、口の中に放り込む。

そのとたん、眩しいぐらいの光があふれて、目を開けていられなくなる。
光が止んで瞳を開くと、鏡の中のわたしは、ママにそっくりの姿になっている。

ママのこと、あまりよくおぼえてない。
でも肖像画に描かれていたママは、いまのわたしによく似ているの。

最初はびっくりした。
ママになったのかと思った。でもすぐ違うってわかった。

目が違う。ぜんぜん違う。
鏡の中に映るわたしの目は、きらきらしてて、ちょっと生意気そうで。

傷男にも目つき悪いってよく言われる。……自分だって生意気そうな目をしてるくせにすぐに人に絡んでくるの。
やなやつ!

寝室でいつも見上げるママの肖像は、もっとやさしそうな目をしてて……
鏡にうつるわたしの目は、わたしでしかなかった。

だから、わかった。
これは10年後のわたし、なんだって。
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