短編小説

□もしも〜男装の少年がパーティに加わったら〜
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「気に食わんな」
「ああ、いけすかないね」


珍しく意気投合した王様と泥棒は部屋の隅に苦々しい視線を送っていた。
このふたりがそろうと、なんだかんだでいつも低レベルな言い合いが始まるわけだが、
今日ばかりは違った。


ティナ、セリス、リルムがきゃあきゃあ騒いでいる。
ティナとリルムの焼いたクッキー、セリスの淹れたローズティ。
飛空艇内には良い香りが漂っていた。


いつもならば、でれーっと情けない顔つきになってしまうくらい
微笑ましい女性陣のティータイムなのだが……


その中に若い男がいる。
少年といってもいいぐらいの若く高めの笑い声が響く。
それにともなってセリスがくすっと笑い、ティナがにこにこし、
リルムは何かつぼにはまったのか笑いが止まらない様子である。


「な、なあ……」
「ああ……」


「あれが『ハーレム』ってやつなの、か?」
ロックが戸惑いがちに部屋の隅で笑っている男を指さすと、
実に不機嫌そうにエドガーが唸った。


面 白 く な い。
エドガーの身分からして、ハーレム気分なぞ今まで腐るほど味わってきただろうが、
この取り合わせは全くもって面白くなかった。


ティナ、セリス、リルム。
よりによって自分が口説き落とせなかった娘ばかりではないか!
その彼女たちがいともたやすくあの若い男に心を許している。
自分はいまだに何か言おうとすると微妙に警戒されているような空気を感じるというのに。
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