TOA

□マスコット
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「何やってんのさ、アリエッタ」

「えっ・・・」


アリエッタが座り込んでいるのは、シンクの部屋。


右手に針と糸、そして左手には小さなマスコットを持っている。

「何で僕の部屋にいるのさ。
 今から寝るんだ。邪魔だよ」

シンク自身の想いとは裏腹に、吐き出された冷たい言葉。

アリエッタはビクッとして、少し震える声で呟いた。

「う・・・だってアリエッタの部屋・・ラルゴが寝てて・・・」

「はぁ?」

「寝ぼけて間違えちゃったみたいで・・・
 アリエッタ、シンクはまだ帰ってないからお部屋空いてると思って、それで・・・」

シンクの顔を見ず、後ろめたそうに続けるアリエッタ。

「はぁ・・・・。別にいいけど。何やってんの」

シンクは半ば呆れながら言った。

アリエッタは、手に持っているマスコットをシンクに見せた。

「・・・何それ。アンタが作ったの?」

「・・・うん」

不器用な彼女の手から作り出されたそれは、一言でいうなら『酷い』出来だった。

所々糸がほつれ、綿がはみでている。

おまけに目が大きくとび出している始末だ。

シンクは、マスコットをまじまじと見つめ、気が付いた。

「・・・これ、イオン?」

「うん。イオン様、一緒にいれないから・・・
 イオン様のお人形を作れば、いっつも一緒だから・・・」

うっとりとした顔でマスコットを見つめるアリエッタ。

その表情を見ているのが苦しくて、悔しくて。

シンクは目をそらす。

「キモいよ」

「ッ・・!?」

「呪いの人形って感じ。ストーカーもたいがいにしないと嫌われるよ」

「アリエッタストーカーじゃないもん!!シンクのいじわる!!」

アリエッタは部屋を飛び出した。

バタン、とドアを閉める音が虚しく響いた。

落ちているマスコットを手に取ったシンクは、それを床に叩き付けた。

気持ち悪いぐらいそっくりなその顔を見たくなかった。

想いを込めて縫われたその顔を。

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