TOA
□代わりなんて、いらない。
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代わりなんて、いらない。
僕は僕で、君は君で。
それ以外、あり得ないから。
「イオン様!!
アリエッタ、また言葉覚えた、です!!」
アリエッタが、僕に笑いかけてくる。
全て、僕の物だ。
花のように可愛らしい笑顔も。
壊れてしまいそうな細い身体も。
───いや、違う。壊れそうなのは、僕の方だ。
君の顔を見れなくなるのは、何日後のことだろうか。
『・・・イオン様。そろそろ、
今後の事をお考えになられたほうが・・・』
『この7人が、イオン様のレプリカ候補です。
ご自身でお決めになってください』
僕の前に差し出された、7体のレプリカ。
どれも気持ち悪い程そっくりで。
アリエッタの横にいるのが誰でも、
きっと違和感は感じない。
でも、そこに僕は居なくて。
君だけしか、居なくて。
「ねぇ、アリエッタ」
「なんですか、イオン様?」
「僕が居なくなったら、どうする?」
「・・・そんなこと、考えたくない、です」
「・・・冗談だよ、冗談。今のは忘れていいからね」
「・・・・・・・・・」
ポツリ、と雨音が聞こえた。
途端、暴れ狂う雫が、地面を湿らせる。
ほんの少しの疑いも、君への未練も、
流しきってはくれずに素通りする雨。
「中に入ろうか。風邪引いちゃうから」
「はいっ!!イオン様♪」
代わりなんて、いらない。
君の傍に居ていいのは、
僕だけだから。
いくら顔が同じでも、
それは僕じゃないから。
君に触れるのも
君を守るのも
君を想うのも
僕にしか許されないから。
それ以外、あり得ないから。