短編

□ナイトメア
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頭が重い。眩暈がする。
漆黒なはずの夜空が何故か、真っ赤だ。



大量に襲い掛かってくる大男。
私の心はきしきしと軋み悲鳴をあげた。それが何故だか解らない。兎に角今は私が欲している何かを求める事が最優先すべきものなのだ。だから心なんてどうでもいい。

すばやくショルダーから銃を取り出す。ばんばんと勢い良く飛び出た弾丸は大男達の脳天に風穴を開けた。綺麗に開いた穴から血飛沫が散る。それが真っ赤な華にみえて次々と欲してしまう。
刀を取り出し腹部を切り裂く。飛び出た胃をまた細かく斬る。
ぐちゃぐちゃという汚らしい音が私の五感を支配し正確な思考回路を奪う。耳を塞ぐこともできた。でもしない。この音を楽しんでいる自分がいる。
視界は真っ暗真っ赤。嗅覚は鉄の匂いに塗れ脳に刺激を与える。口元は愉快そうに歪んでいる。きっと今の私は物凄く汚くて醜いのだろう。それでも構わない。この世の全てを赤に染めて私も赤に染まりたい。狂っているのだろうか。いいや、狂っているのは人間共だ。なんでこんなに美しいのに、妖艶なのに求めないの?

甲高い、悲鳴にもちかい笑い声をあげ切り刻む。この血肉を裂く感触、感覚がやみつきになって止められない。
命乞いする声も美しい音色に聞こえ気持ちは高ぶるばかり。



あっという間に片付き、残るは1人。
甘栗色の髪に真紅の瞳すらりとした手足の美少年。見覚えがあった。脳裏に浮かぶ愛しい人。でも顔も、声も、何もかもが霧にかかったように曖昧で苦しくなる。
少年は自嘲するかのように微笑む。真紅の瞳には戸惑いと不安の色が見え隠れしていた。

そっと、誰かの名を囁く。低く、はっきりと、優しく。愛しい人と一瞬重なった。それを全否定して刀を向ける。
血で塗られたどす黒い赤色。貴方の瞳もたいね。瞳を伏せ何かに苦しむように歪んだその顔。沢山溜めた涙と呼ばれる物は今にも零れ落ちそうで。その表情のまま刀を抜く。

如何してそんな顔してるの?泣きそうな顔。それを堪えるように重ねていく刀。
隙を見せてしまった。斬られる。そう体を強張らせた。なのに、覆いかぶさってきた貴方の体。大きな手で抱きしめて離してくれない。唇に優しくキスを落とされる。不思議と嫌ではなかった。

ずっとこのままで、そう思うのとは裏腹に私の手は勝手に動いて貴方の腹部を一刺し。
ゆっくりと倒れていく貴方を見つめながら思ったのはあの頃の記憶。何時も笑って泣いての喜怒哀楽。そんな愉快な生活をしていた頃の忌々しい記憶を私は忘れていたの?

ふっと微笑んで私の頬を撫でる。口をぱくぱくさせて何かを訴える。


「    」


聞こえない。聞こえないよ。びちゃびちゃと云う汚い音に塗れて聞こえない。



周りは大好きな新選組の皆。
腕の中には息絶えた愛しい恋人、総悟。









 


狂ったナイトメア
(如何して?)(私、が・・・・・)(誰か夢だと言って)

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