短編

□紅い
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血が、ぱたぱたと落ちるのを遠くで聞いていた。
でも、実際には近くで落ちていて、その音すらわからないほどに感覚が鈍くなっていた。


「晋、介…」


苦し紛れに吐いた言葉は、宙を彷徨い空気と化した。
ぼやける視界のなかで、晋介が妖しく笑っている。
何時の間にか首にまわされていた手から感じる体温も遠のいて、苦しい。
酸素を求めようにも息がすえない。
もがくように浮いた両足をばたつかせれば、床に組み敷かれる。

まっすぐな視線がいたい。
苦しい、苦しい、苦しい
そっと、唇から伝わるダイレクトな感覚に、酔いしれながらわたしは息を引き取った。





酸素の変わりに
貴方の


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